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『大怪獣東京に現わる』 '98 吉本興業・丸紅・東急エージェンシー

監督:宮坂武志
原案・脚本:NAKA 雅 MURA
出演:桃井かおり・本田博太郎・角替和枝・石山雄大・吉行由実・奥野敦士・田口トモロヲ・沢木麻美・竹内力・高松英郎


 怪獣が全く登場しない怪獣映画。ゴジラらしき巨大生物とガメラらしき巨大生物が日本に上陸するのだが、それらの姿は一切登場しない。松竹配給のこの映画であるから、東宝・大映に対するある種のアイロニーなのかと思いきや、物語を観る限りそんな感じではなく、寧ろ、ジャパニーズ怪獣映画のセルフパロディを用いた、『ディープ・インパクト』などのハリウッド型パニックムーヴィーに対するアイロニー、といった雰囲気だ。群像劇的に仕上げているところなどは、『ディープ・インパクト』或いは『デモンズ2』を意識している筈である。

 基本的にはコメディであり、怪獣映画特有のスケールが異常に拡大された危機感というものは全くと言っていい程感じられない。パニック映画を日常的な範疇に押し戻し、より人間サイドの観点でパニック映画を解体した、といった風情だろうか。まあ、コメディであるのだから、その様な仰々しい意図などは元々無かったのであろうが。というか、おそらく、確信犯的なB級映画なのであろう。意外と豪華な俳優陣に違和感を感じてしまいそうなくらいにB級である事には間違いない。竹内鉄郎のPVを観ている様な感覚に近い。

 宮坂武志・NAKA 雅 MURA・竹内力というトリオは、後に大傑作『岸和田少年愚連隊カオルちゃん最強伝説』シリーズを産み出す事となる。その雛形を観る事が出来る、という点でこの作品は重要である。
 この作品の登場人物達はそれぞれに個性的であり、正に群像劇の要素として正しく働いている。その中でも、やはり特殊でいて、最もインパクトがあるのが竹内力演じる百太郎だ。このキャラクターだけが唯一現実世界の住人ではない、どこから来たかも分からないストレンジャーだ。ちょうど、位置付けとしては二匹の怪獣と同じである。つまり、この作品の前提である「人間の群像劇」を壊す存在なのだ。そんな役を竹内力が演じるのだ。たまらない。
 そして、後に“非人間”としての竹内力が『岸和田少年愚連隊カオルちゃん最強伝説』シリーズにおいて、開花する。巨大生物なんかよりも、竹内力の方が怖い、という事にまだ気付いていない、この作品の登場人物達。全くおめでたい作品である。