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『dead BEAT』(ビデオ題『さらば極道/dead BEAT』) '99 ギャガ・コミュニケーションズ

監督:安藤尋
脚本:伊藤秀裕・長田敏春・及川中・安藤尋
音楽:大友良英
出演:哀川翔・真野きりな・村上淳・鈴木一功・根津甚八


 ビデオパッケージに「監督・和泉聖治」と明記されてあったので、そのつもりで観てしまい、余りにも和泉聖治らしくないコジャレた映像に度胆を抜かれたが、なんて事はない、ただの誤植であり、監督はこの作品がおそらく商業映画デビューとなる安藤尋であった。和泉聖治がこんなスタイリッシュな映画を撮るはずがない。
 それにしても、最近の日本映画は、この『dead BEAT』のような淡白なセリフのコラージュによって構成されている作品が多い。かつての日本映画の様に、解り易い盛り上げ方、大袈裟なキャラクターは観客に求められていないのであろうか。昔ながらの日本映画を撮る和泉聖治が逆に浮き彫りになってしまう程である。

 この作品でも当たり前の様に使われている手法なのだが、盛り上がるべきシーンで、敢えて静かな音楽を挿入するという手法がある。七十年代の東映映画なら、絶対にそんな手法は使わず、アクションシーンではこれでもかと言わんばかりの激しい音楽を鳴らしたものだし、カーチェイスのシーンであれば、テンポの速い音楽が使われた。しかし、この作品を含めた最近の作品では、そうは行かない。全体のトーンを統一し、比較的淡々とした音楽が、まるでストーリーを無視するかの様に流され続ける。そして、その音楽によって、一種異様な空気が産まれる。
 音楽を担当した大友良英は、一部で絶大なる支持を受けるアヴァン・ギャルド、もしくは、インプロビゼーション系のギタリスト&ターンテーブル奏者だ。また、映画音楽も数多く手掛けており、香港映画の『女人四十』や相米慎二監督の遺作となった『風花』などが代表作である。僕は大友氏のライブに何度か行った事があるのだが、その難解なプレイと、とんでもなく大きい音量、そして、時折挿入される、美しい音色に、理解出来ないものの中に潜む何か新しいものを感じた(感じた様な気になった)。この『dead BEAT』の中での大友氏は比較的、否、かなり解り易い音楽を演奏しているが、それでもどこか、他の作品の音楽とは一線を画すものとなっている(様な気がする)。そして、その音楽と同時に哀川翔という俳優が画面の中で静かに動いている事に、幾らかの違和感を感じざるを得なかったのだが、その違和感はとても心地よかった。

 大友良英と哀川翔のコラボレートが実現したという事実だけでも、この作品は大成功である。もし、単なる誤植ではなく、本当に和泉聖治が監督であったら、実現しなかったであろうこの事実を尊重したい。でも、勿論、もし和泉聖治がこの作品を撮っていたのならば、と考えるとワクワクしてしまうのではあるが。