目次

『デコトラ外伝 男人生夢一路』 '01 スパイク

製作総指揮:菅原文太
監督:OZAWA
脚本:水上竜士・OZAWA・菅原加織
出演:菅原加織・anna・中島宏海・田口トモロヲ・水上竜士・江原修・土平ドンペイ


 菅原文太の長男である菅原加織が、平成十三年十月二十三日、世田谷区下北沢の小田急線踏切で電車に撥ねられ、三十一歳という若さで死亡した。
 菅原加織の最初で最後の主演作がこの『デコトラ外伝 男人生夢一路』である。実の父親のプロデュース、大先輩小沢仁志の演出の下、画面いっぱい動き回る菅原加織の姿に微塵の死の香りも感じられない。菅原文太は、これからの俳優を育てるという目的も考え、この作品のプロデュースをしたという。菅原加織は、これからの俳優であった。全く、悲劇を憎むしかない。

 この『デコトラ外伝 男人生夢一路』を簡単に表現すると『ラン・ローラ・ラン』プラス『スピード2』プラス『トラック野郎』プラス『トロン』といったところであろうか。パラレルワールドの繋ぎ合わせで繰り広げられる幾つかの可能性。スピードとの戦いとアクション。そして、映画タイトルの元になったプレイステーション用ゲームソフト『爆走デコトラ伝説2〜男人生夢一路』からのCGとの融合。リミックス的な側面もあるが、それ以上に新たな試みに挑んだ意欲作という印象が強い。俳優も監督も映像も、次世代の可能性を示唆する作品であろう。
 元々はゲームメーカーであるスパイクが菅原文太にデコトラ映画の製作を依頼したところから始まったこの作品。そして、菅原文太が、監督にOZAWAを、脚本に水上竜士を指名した。つまり、作品内でゲームの映像を使わなければならなかった事や、トラック野郎が素材であったという事は、初期の段階からの“縛り”であったという訳だ。菅原文太も「今の時代にトラック野郎をどう見せるかが問題だったのですが」という発言をしている程である。
 しかし、それも全くの杞憂であっただろう。OZAWAは従来のトラック野郎のイメージにこだわるはずもなく、自分の世界観を存分に発揮し、ハリウッドのアクション大作を思いっきり意識した作品に作り上げた。それは、決して日本映画的なものではないが、それ故に、新たな可能性を感じるものであり、また、この日本映画界においては、OZAWAのパーソナリティーとなり得るものである。そして、菅原加織も父親の面影を残しながら、新しい世代のエネルギーを発散している。この作品は清々しい。
 また、パンクラスの謙吾と須藤元気も出演しており、格闘技好きも思わずニンマリだ。

 これだけの意欲作を残して逝ってしまった菅原加織はギルティーである。こんな面白い作品をつくりだせたのに。もっともっと面白い作品をつくりだせたはずなのに。菅原加織が亡くなってしまったから、この作品の価値が上昇する、などという事を考える人が、もし居るとするならば、残念で仕方がない。