| 『ダイナマイトどんどん』 '78 大映 監督:岡本喜八 脚本:井手俊郎・古田求 原作:火野葦平 出演:菅原文太・宮下順子・北大路欣也・嵐寛寿郎・金子信雄・岸田森・中谷一郎・フランキー堺・小島秀哉・石橋正次・田中邦衛 製作は大映、配給は東映、中身は東映仁侠路線のパロディ。ヤクザを題材にしたコメディ映画というよりは、ヤクザ映画のパロディ。仁侠映画の進化的なパロディが東映実録路線であるのならば、それとは全く逆のベクトル。お伽話を現実世界へ下げてくるという手法ではない。テレビのチャンネルを換えるだけの手法。同じ世界観のままに、ただただおかしくしてあるだけのパロディだ。だから、決して進化的なヤクザ映画ではない。単なる“異色”ヤクザ映画である。 舞台は戦後間もない北九州。絶える事のないヤクザ同士の抗争に見兼ねた警察署長は、斬った張ったの抗争を集結するべく、ヤクザの互助的連合団体を設立。そして、抗争の決着を野球大会で着ける事にした。古くから北九州に根を張り、仁義を極める岡源組と、金をものを言わせる新興の組織・橋傳組との壮絶な野球バトルが始まる! そんなまるで『地獄甲子園』。実際に中身の方も『地獄甲子園』級のヘンテコ具合で、特に田中邦衛は(クールだけど)おかしな投げ方とかしちゃって、もう完全に劇画そのもの。これで日本各地から戦士を募っていれば『アストロ球団』にもなってたかも知れない。 とは言っても、基本は仁侠映画である。義理人情やら恋だの愛だのが付き物だ。そこら辺の話は、基本的に北大路が担っている。北大路とその嫁の宮下順子、そしてそこに文太が絡んでどうのこうのってな具合。でも、残念ながらその部分に限ってパロディとしての要素が決定的に少なく、なんとも無駄な感じがしてならない。北大路が全くもっておかしな言動をしないし、この絡みにおいては文太も文太で格好良くなってしまう。作品全体のノリは『トラック野郎』的などうしようもなさに溢れてしまっているのだから、こっちは桃次郎を期待するって話だろうに、思いっきり肩透かしを喰らって、なんとも困惑するばかり。仁侠映画(というか『東映』って言った方が適切かも知れない)の良い意味で期待を裏切らない、っていうお約束を破棄されたみたいで、あんまり気持ちの良いものではないのは確か。北大路が格好良くあり続けるのは良いけど、せめて文太はもっと情けない部分も見せないと。 でも、基本的にはかなりのバイオレンスに溢れていてかなり面白い。特に決勝戦が終わった後の全員参加型バトルロイヤル大パノラマは爽快すぎる。ヤクザ映画としてイメージされるものに近いであろうが、本物のヤクザ映画では決して出てこない、もみくちゃなだけで敵も味方もなくなってしまった、究極の戦争を観る事が出来た(それを岸田森が双眼鏡越しに覗くのは、間違いなくパゾリーニへのオマージュである)。こういうのは東映製作では観られない、本当に貴重な映像だと思う。敵味方がなくなるバトルはヤクザ映画では絶対有り得ないのだから。 なんとなく物足りないのは、文太、北大路に続く大物キャストがいなかった点であろうか。これで松方もしくは梅宮が出ていたのであれば、もっと楽しめた筈。むしろ山城が適任か。でも、それは余りにハマり過ぎちゃうか。 ちなみに、ベストアクトは志賀勝。周りにピラニア軍団がいない中、いつもよりもちょっぴり控え目に後ろの方でアピールしている。本人の消化不良具合が物凄く伝わってきて、逆に好印象だった。 |