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『不倫妻の性 快楽あさり』 '92 アウトキャスト・プロデュース

監督:サトウトシキ
脚本:小林宏一
出演:岸加奈子・栗原早記・杉浦峰夫・江藤保徳・中根徹・清水大敬


 サトウトシキ初期の代表作とされている暴力系サスペンスピンク映画。小林宏一がちょうどその頃コーエン兄弟の『ブラッド・シンプル』にハマっていて、そういう感じのものを作りたかった、という事で、その話を聞くと、なんとなくと納得出来る。原題の『単純な話』っていうのもそこに繋がるって事だろうか。

 セックスと暴力のオンパレード。全ての登場人物達が欲望の赴くままに動いている。おそらく何一つ考えるという行為は行われておらず、全てが衝動に任され、そしてその全てが最悪の結果へと繋がっている。本当に解り易く、本当に単純な話である。欲望がいかに人間にとっての罪悪であるかという事が目の前で展開され、禁欲の上に成立する現代社会が如何に過ごし易いものであるか、という事を改めて認識させられた。欲望を抑える事が出来なかったら、全ての人間が死を迎える事であろう。現に、欲望のままに動くこの作品の中の人間達は死を迎えている訳だし。
 人間の衝動的な欲望への解放を描くこの作品で、サトウトシキは正しく衝動的でアグレッシブな演出を繰り返している。バーナーで人間を焼き殺し、熱湯を顔にかけ、拳銃を局部に突き刺し、生首が飛ぶ。それらの劇画的な過剰演出は、サトウトシキの表現に対する衝動的な欲望であろうと考える。衝動的な欲望という作品のテーマに、表現というフィールドで便乗し、出来る限りの事は全部やった、といった印象だ。
 ゾンビの様な特種メイクなども普通のピンク映画であったら考えられない。なのに、それをやり、尚且つ、ゾンビ同士のカラミをしっかりと描く。余りに頽廃的すぎるエロスであり、決して観客のニーズに応える類いのものではない。これを監督の欲望と言わずして、一体どういう説明が出来ようか。

 この作品の主題は、登場する殺人の衝動に至る原因の全てがセックスにある、という点に集約される。結局は、繁殖と生存の欲望(それは本能と呼ばれる)こそが全てに対して優位なのだ。この作品はその動物的な根本を最も人間らしいいやらしさを持って表現した。
 本当なら、殺した人間を食するなどしてこそ完璧な本能の表現をなし得たのであろうが、それは流石に許されなかったのだろうか。それとも、そのシーンがなかったという事は、この作品は本能を描くものではなかった、という事なのか?