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『闇金の帝王 銀と金』 '93 SHS

監督:中原俊
脚本:加藤正人
原作:福本伸行
出演:中条きよし・豊原功補・中村久美・中島ひろ子・山田辰夫・天本英世・小松方正


 福本伸行が持つ独特の世界観は、あの超絶なる画力と余りにも現実感から懸け離れたネームから来るものである。もちろん、アイディアやストーリーの奇抜さも福本の魅力ではあるが、それ以上にヴィジュアル的なインパクトや人を惹き付けて放そうとしないハードボイルドな言葉は、読者の脳髄を抉り、それはまるで洗脳のように人生観にすら影響を与える。天才とは正に福本伸行の為にある称号だ。

 そんな福本伸行の初期の名作『銀と金』の映像化がこのVシネマ『闇金の帝王 銀と金』なのだが、残念な事に原作を超える事はなかった。凡庸な金融ものVシネマが出来上がっただけだった。

 とんでもない断言をしてしまうが、福本が作り出すキャラクターは人間ではない。非人間的なインターフェイス、聞いた事もないようなエキセントリックなセリフ、そして、必要以上に繰り広げられる壮絶な勝負。全くの非現実の中で魂を削り合うキャラクター達に等身大の人間を投影する事は出来ない。彼等は人間ではないのだ。
 非人間を人間が人間として演じるという事自体に無理がある。非人間である福本キャラクターの良さは完全に失われてしまったのだ。ここにあるものは福本の持つ独特な世界観では全くなく、福本のプロットに基づいて作られただけの普通の金融ドラマなのだ。勿体無いと言うか、仕方ないと言うか。福本漫画恐るべしと言うか。

 しかし、主演の中条きよしは多少なりとも福本の世界に近付こうと、精一杯の扮装をしている。そのチープさは、福本の世界観に合致するであろうものなのだが、福本伸行はその程度に収まる訳もなく、残念な事に悪足掻きにしか見えない。福本伸行に到達する事など、どだい無理な話だ。