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『ぐしょ濡れ美容師 すけべな下半身』 '98 アウトキャスト

脚本・監督:女池充
出演:佐々木ユメカ・田中要次・川瀬陽太・相沢知美・田嶋謙一


 泥酔して行きずりの男(川瀬陽太)と一戦交えたラブホテルで火災に遭ってしまう麻子(佐々木ユメカ)。彼女を救出して一目惚れしちゃった消防士(田中要次)は、彼女が酔っぱらって行きずりの男の顔を覚えていなかったのをいい事に、行きずりの男に成り済まし、そのまま恋人になる。消防士は現場で男の携帯を拾っていた事から、男とも友人になる。嘘をつきながら、恋人関係、友人関係は続いていく。でも、その嘘がばれて…。

 物凄く爽やかなラブストーリー。決してシリアスになる事はなく、でもおちゃらける訳でもなく、微妙に弛緩したテンションの中、コメディタッチに事が進んでいく。登場人物もそれほど若くもないのだけれど、なんとなく淡い青春を感じる様な胸キュン系ピンク映画。特に純朴・実直系キャラクターの田中要次は、禿げているにも関わらず最高の童貞っぽさを醸し出していて、直視し難い程。その対となるちゃらんぽらん系の川瀬陽太もやる事はやってるくせに、いざという時に人間の良さを出してしまうから、これまた可愛らしい。
 ピンク映画らしからぬ爽やかさで、セックスが完全に浮いてしまってもおかしくない物語ではあるが、それが全然浮いていなくて驚く。いや、むしろ、この作品はセックスこそが軸になっていると思える程だ。
 佐々木ユメカが行きずりの男に関して、唯一覚えている事柄はセックスであった。つまり、今までにない程に“感じた”というのだ。だからこそ、顔を覚えていない行きずりの男を恋人にしてしまう。でも、結局、その恋人にした男は、自分を感じさせた張本人ではないのだけど、その男のセックスがまたそれなりに結構良かったから、その関係は成立した。
 淡い恋心という爽やかさが作品全体を包んではいるものの、その実は「女が持つアクメに対する強烈な欲求」こそが作品のテーマであり、男達はそれに振り回されるばかりである。しかし、それは、裏を返せば、セックスを(無意識的であれ)武器とする男達に騙され、振り回される女の哀しみでもある。
 淫蕩に明け暮れる事によって、こういうテーマを表現するのは容易い事であろう。しかしながら、この作品ではその様な常套的なインモラルを一切排除し、あくまで爽やかな恋愛によって描き出した。カラミは自然すぎる程に自然で、エロスを呼び起こす様な類いのものではなく、恋人同士が行う当たり前のセックスになっている。それこそピンク映画におけるカラミの必然性を脚本的にクリアーした、といった感じ(悪く言えば、アート系似非エロ映画のカラミみたいでもあるのだけど)。
 セックスをテーマに据えつつも、無理矢理セックスをピックアップする事なく、自然な恋愛映画に出来上がった、希有な例。これは傑作であると思いますよ。佐々木ユメカの微妙に若々しい姿も、微妙に酒ヤケしていない声も、かなり魅力的だし。