| 『安藤組外伝 人斬り舎弟』 '74 東映東京 監督:中島貞夫 脚本:松田寛夫 原作:安藤昇 出演:安藤昇・菅原文太・梅宮辰夫・渡瀬恒彦・安岡力也・前田吟・室田日出男・片桐夕子 かつて渋谷の街を支配していた暴力団・安藤組。個性的で英雄的な構成員に恵まれたこの組の中で、最もプリミティヴな魅力を放っていたと言われる狂気の暴力マシーン花形敬の半生をモデルとして製作されたこの作品。実質上の主演である花形敬(作品内では日向謙)は菅原文太が演じている。 狂気の若者と器のでかさがとんでもない組長、という図式は『現代やくざ 人斬り与太』そのものであり、またそれらを演じるのが菅原文太と安藤昇であるという点でも、『現代やくざ 人斬り与太』を想起して止まない。しかし、この二つの作品の決定的な相違点は、『現代やくざ 人斬り与太』が完全に若者にスポットが当てられた青春劇であるのに対して、この『安藤組外伝 人斬り舎弟』は若者(花形敬)のストーリーと安藤組が伸し上がるストーリーとの二本の軸で構成されているという部分であり、その所為なのか、前者では若者を象徴する暴力描写の占める割合が高く、後者では比較的低くなっている。勿論、この『安藤組外伝 人斬り舎弟』も十分暴力的ではあるのだが、安藤組のストーリーにおける安藤先生のクールさが、その暴力のドぎつさを幾らか緩和しているのだ。 正直に述べてしまうが、この作品は中途半端だ。菅原文太の狂気を観たいのであれば、『現代やくざ 人斬り与太』を観た方が適しているであろうし、安藤組のストーリーを楽しみたいのであれば『安藤組外伝 襲撃篇』を観た方がいい。物語を構成する主要素が二つもある事によって、主題がぼやけてしまっているのだ。また、後半の「横井英樹襲撃事件」に関する描写もどこかで観た事のある(つまり、『安藤組外伝 襲撃篇』で観た事のある)様なシーンばかりで、その手抜き感は否めない。 まあ、なんだかんだ言っても、安藤先生の映画であるのだから、安藤先生の名前を一番最初に出し、安藤先生をカッコよく描く、というのが筋なので、安藤先生が最も主張したかった事件である「横井英樹襲撃事件」がいろいろな映画で何度も登場するというのも納得しなければならないのであろう。本物としての安藤先生がそこにいるっていうだけで、その価値は量り知れない。 それにしても、やっぱり安藤昇はとんでもない。渋谷に構えた安藤組が他の組織をこてんぱんにし、渋谷の街を支配した時、安藤先生は二十八歳だったというのだから。セイガク上がりの半端者だろうがなんだろうが、本物の侠(おとこ)であれば、必ず世界をその手に収める事が出来るのだ。有名女優を妾にする事だって出来る。その女優に足の爪を切らせる事だって出来る。 そんな男の夢を実現し、それを嬉しそうに、それでいてクールに語る安藤先生直々のナレーションに股間を濡らす女性は後を絶たない筈だ。僕はそう信じて止まない。そして、そんな安藤先生に無条件の敬意を払う。 |