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『戦後秘話 宝石略奪』 '70 東映東京

監督:中島貞夫
脚本:中島貞夫・金子武郎
原作:菅原通済
出演:菅原文太・丹波哲郎・若山富三郎・片岡千恵蔵・橘ますみ・賀川雪絵・松井康子・八代万智子・小池朝雄・小松方正


 題名だけをみるととても面白そうなんだけど、中身の方はそれほど面白くない、正に名前負けしている作品。ヤクザ映画でもなんでもないので、中島監督の過剰バイオレンスが観られる事もない。正直、物足りない。でも、最後がすごいんだよなぁ…。

 主人公山田(文太)は復員兵。戦地から帰ってきたら、妹がパンスケになっていて、しかも脳梅でいかれて死んでしまう。それ以来、山田はパンスケという仕事を憎み続ける。
 ある日、闇屋(小松)の搬入を襲う山田だったが、なぜかその時、仲間を裏切り、闇屋の秘書となる。それから、政界のフィクサーやら悪徳代議士などとの交流が始まる。そしてフィクサーから日銀の地下に眠っていたという40億から50億もの価値がある“グレートモンゴリア”というどでかいダイアモンドをマカオに運び、換金するという役目を負う。その後、フィクサーは死に、闇屋、代議士、軍人、そして山田の宝石の奪い合いが始まるのだった。

 なんだかスパイものみたいなお話。マカオロケもあって、全体的に無国籍感が溢れる異色作。丹波先生はなかなか出てこないんだけど、出てきたらまたその無国籍感が一気に増大し、もうなんか東映の映画っていうか、日活へのオマージュなのではないか、っていう感覚すら抱く。その他にも、なんだか東映らしくない部分がたくさんあって、「おい、それは小津だろう、東京物語じゃねえのか」みたいな安直な想像をさせる様な部分もあったり、拷問シーンなんかは『時計仕掛けのオレンジ』っぽかったりもして、嬉しい様なそうでもない様な、変な戸惑いを覚える。
 暴力的、不良的、っていう様な解り易い東映の色が薄いのが、やっぱりいまひとつ作品そのものが盛り上がらないいちばんの理由だと思う。悪いやつは確かにたくさん出てくるんだけど、それは全部が全部、金目当ての狡猾な悪さであって、こっちが求めているそれとは全然違う。で、それに対するヒーロー的存在、というか、対立構造もやっぱりあるにはあるんだけど、そのヒーロー的役割を担っている山田も、結局は金目当ての裏切りの中にいる訳で、その他の悪いやつらとあんまり違いがない。それに、パンスケを助ける為に金を使う、っていうのもかなり偽善的で男らしくない。
 主人公をたてるのも良いが、もっと群像劇っぽくしても良かったんじゃないの、って思う。その要素の中に、中国人役の若山富三郎もくわえこんで。そうすれば、役者の弱さも十分補えただろう。

 物足りないのは間違いないのだが、ラストだけは本当にとんでもなく恐ろしい。それまで暴走する事無く、無難にこなされてきた感じ脚本が一気に崩壊する。結局何も解決しないのは勿論だが、それを最もおかしな表現方法でもって描いてしまった。ラストに至るまでは中島監督の狂気がほぼ皆無である作品だけに、山田の最後のシーンが異常なまでに浮き上がる。オカルトというか、SFというか、もう何が何だか解らないエクトプラズム塗れのラストシーンだけで、この作品は存在意義を見い出した。ラストを組み立てるのが面倒臭くなって、滅茶苦茶にしてしまう、本宮ひろ志を思い出す。

 全体に渡って、このラストで輝くエクトプラズムがフィーチャーされていたら、それはそれは恐ろしい作品になっていた筈だ。ラストだけが狂っているからこそ、作品として成立している、って言われれば、それは尤もな話だと思うけど、味付け程度くらいにでも狂気が欲しかった作品。小池朝雄の悪すぎる演技もなんだか空回りに見えてきてしまう。