| 『自殺サークル』 '02 アースライズ 脚本・監督:園子温 出演:石橋凌・永瀬正敏・さとう珠緒・宝生舞・野村貴志・ROLLY・嘉門洋子・萩原明・余貴美子・迫英雄・麿赤兒 『CURE』やら『催眠』やらの集団意識コントロール系のサスペンスホラーであり、はっきり言って物語そのものに新鮮味は感じられない。善悪やモラルの逆転、或いは常識の破壊というテーマも既に消費され尽くしているのだろう。色々な考え方が、フィクションという枠組みに中でおいてのみほぼ完全に許容されている現在では、よっぽどの事をしないと衝撃を与える事は出来ないのだ。残念ながら、その事をこの作品は証明してしまう。 しかしながら、集団自殺のシーンはとても衝撃的である。まぁ、正直作り込みの足りない陳腐なスプラッター的表現ではあるのだが、それがまた心地よいのも事実である。従来のスプラッターホラーの残酷描写やホラー映画の特殊メイクは、リアリズムを追究しているかどうかは定かではないが、肉々しさを考慮していると思われる。「偽物じゃん」と言われないようにしていると言うか。ところが、この作品の集団自殺のシーンに出てくる残酷表現は明らかに作り物である。全くと言ってリアリスティックではない。一目で血糊と判断出来る液体がバケツでばらまかれる様にスクリーンを深紅に染める。驚く程に、現実味がない。しかし、何故だが、いつも観ているスプラッターホラーよりも嫌悪感を感じてしまうから、これまた不思議。ホンモノっぽい映画に慣れ過ぎていて、偽物っぽい虚構らしい虚構に今まで観た事の無い気持ち悪さを抱くのだ。むしろ、この偽物こそが現実的な人間の肉の破片なのではないか…。 やはり、この作品は女子高生の集団自殺シーンに集約されるのだろう。あの爽快でいて、罪悪的でいて、官能的な命の遊戯は充分に衝撃的だ。でも、それ以降の謎解きの展開は今一つ。むしろ、そんな事をしなくても良いのではないか、と思える程に。 この作品で、最もおいしい役を演じたのは嘉門洋子であると思う。近頃、映画女優への転身を図りつつある嘉門は一見して彼女と分からない風貌で登場する。それなりのキーパーソンでもあり、作品内における重要度は極めて高い。いや、本当はそれほど高くないのかも知れないけど、作品全体のバランスが些か狂っているので、彼女こそが鍵を握っているかの様にも思えてしまうのだ。 うーん、惜しい作品だ。もうちょっと脚本が練られていれば、ものすごく面白くなっただろうに。監督が途中で妥協した感じが伝わってきて、後半はかなり辛かった。時間が掛かっても良いから、納得行くものを撮りましょう。 |