| 『殉霊鬼』 '99 アースライズ 監督:関顕嗣 脚本:丸太芳介 出演:緒沢凛・相川みさお・川島和津美・今井田智・益子和浩・渡辺裕之 『13日の金曜日』に端を発すると思われるホラー映画のセオリーというものを踏襲したり、或いは、何らかの形で揶揄したりする作品は数多くあるが、この『殉霊鬼』に関しては、それの劣化コピーという表現が一番しっくり来るだろう。山奥で羽目を外す若者たちに襲い掛かる殺人鬼。その殺人にどんな動機付けがあるかというサイコスリラーの手法ではなく、あくまで、惨忍な殺戮に重きが置かれたスプラッターホラーとして徹底された手法。特化させるファクターは少ないのだが、ある意味安心出来る作品でもある。しかし、残念な事に恐くもないし、面白くもない。 はっきり言ってしまえば、ホラーとしては殆ど観る所がないのではあるが、只ひとつ、羽目を外す若者たちの描写については、それなりに面白い視点が採用されている。 それは、麻薬。ドラッグ。大麻である。今まで、日本の映画において、ヤクザ、マフィア、クラブ、或いは、新宿、などといったキーワードの下にドラッグが扱われた事はあったが、それ以外の文脈で、しかも、一般人が堂々とドラッグを嗜むという描写はとても少なかった。また、仮にそのような描写があったとしても、それは何らかの理由(眠気覚ましなど)を持った覚醒剤の使用であったり、セックスのフレイバーとしての媚薬・誘淫剤であったり、つまり、(乱暴な表現ではあるが)幾らかの正当性を持ち合わせていた。少なくとも、ドラッグ文化を快楽を齎すものとして、分かりやすくは表現していなかったし、後ろめたさや逆説的な表現を含んでいた。 しかし、この作品において若者たちが嗜む大麻に微塵の罪悪感も感じる事が出来ない。当たり前のように楽しみ、そして、トびまくる。まあ結局、殺人鬼に襲われるという事は、その行為に対する天罰なのかも知れないのだが。 また、ドラッグ肯定を匂わせるのは登場人物のキャラクターだけではない。演出側にも明らかな意図が見て取れる。 『イージーライダー』はヒッピー文化とアシッド文化の象徴的作品である。デニス・ホッパーがアメリカという自由の国であの映画を作ったのであるから、何も咎める事は出来ないのかも知れない。しかし、それと同じ表現を現在の日本映画、しかもホラーで描く事に果たして必然性を与える事が出来ようか。それをやってしまったこの作品は先鋭なのかも知れない。とは言うものの、この作品は全くのマス・アピール能力を持っていないのではあるが。 ドラッグを直接的なテーマに据えた作品や、アート志向、或いは、カルチャー志向の強い作品であれば、ドラッグに対する描写をマスに受け入れさせる事が出来る。そこには必然性があるのだから。しかし、この作品のようにドラッグと関係のない作品で思いっきり大麻を吸われると、なんだか表現し難い気持ちになる。ここでやってれば、バレないだろう。こんなマイナーな所なら、誰も気付きやしないよ。そんな印象だ。 でも、ホラーとしてはどうしようもない。 |