| 『呪怨』 '99 東映ビデオ 監修:高橋洋 脚本・監督:清水崇 出演:栗山千明・三輪ひとみ・三輪明日美・洞口依子・大家由祐子・芦川誠・柳ユーレイ “地縛霊の様なもの”を中心として、巡って行く群像劇型ホラー映画である。おそらく基本としては、所謂「怪談」の様な心霊実話テイストもののオムニバス作品である、と言って良いだろう。一つ一つの物語は独立していると考えて良い。 一つ一つの物語だけを抽出するのであれば、それぞれが突出しているものでもないし、一つあたりの時間も十分程度であるから、ちょっとしたお話、くらいの感覚しかない。しかし、その全ての物語が絡み合い、そして、収束して行く全体の流れに、いつの間にか呑み込まれてしまう。 監督の清水崇は、高橋洋と黒沢清が講師を勤める映画学校の生徒であった。そこで、才能を見い出され、ホラー映画界にデビューした。その所為なのかは解らないのだが、『リング』関連作品や黒沢清作品を確実に受け継いでいる。全体的にテンションがかなり低い。画面の中に必要以上の人間が登場しない。謎解きを重視しない。ヒーローの不在。箱庭的に完結する恐怖。これら、現在の日本ホラーの定番とも言える手法をかなり忠実に踏襲している。 善くも悪くも日本ホラー的なこの作品の恐怖は、ハリウッド的な危機的な状況における恐怖やお伽話的な非現実性の恐怖ではない。寧ろ、解り易い形での視覚的恐怖に支配されている。風呂場の窓から垂れ落ちる両腕。階段から滑り落ちる血塗れの女。画面の端に映り込む子供の足。それらの映像による恐怖がこの作品の根幹である。それ故に、謎解きが為されていなくても、物語が終焉しなくても、作品としての面白味は軽減しないのだ。例えば、心霊写真を見ると、それがどんな理由で映り込んだかどうか、という事を抜きにして、なんとなく恐怖を感じるであろう。それと同じなのである。あってはいけない場所に、それが存在する、というだけの恐怖なのだ。それをしっかりと映像化した、という部分で、この作品は最高に怖い。 視覚的恐怖、という点では、黒沢清の『降霊』に近い。しかし、『降霊』での軸は、霊的な存在ではなく、弱々しい人間の心にあった。救い様のない物語を演出する為の視覚的恐怖であった。この作品においては、全くの逆である。物語そのものはまるで、視覚的恐怖を正当化する為に存在しているかの様だ。ただ、あの霊的な子供を見せたいだけなのでは…。 監修が高橋洋となっているのは、どうやらそれが原因らしい。この作品のプロットそのものは、学生時代の課題として、既に完成していた。しかし、清水崇は物語云々を抜きにして、ダイレクトに視覚的恐怖を見せてしまう。それは幾らなんでも…、と思った高橋洋が再構成し、映画としての体裁を保った、というのだ。清水崇の持つ視覚的恐怖を表現する才能を世に出す為に、高橋洋が監修をしたのだ。 確かに、映像だけを見せられても、ただ意味が解らないだけで、全く恐怖を感じる事はなかったかも知れない。しかし、延々と怖い映像を見せられ続ける作品、というのも観てみたい、なんて思ったりも。 余談ではあるが、同じ作品に出演しても絡むシーンが少ない三輪姉妹が、この作品では、しっかりと絡んでいて、しかも、本当の姉妹を演じているかの様なナチュラルさがモリモリに出ている。そんな三輪姉妹を観る事が出来るのはとても嬉しい。それも含めて、この作品は僕の中のホラー映画ランキング上位に食い込む。 |