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『課外授業 暴行』 '89 国映

監督:瀬々敬久
脚本:佐々木宏・瀬々敬久
出演:中島小夜子・松永久仁彦・清野歴史・小川真実・佐野和宏・下元史朗


 瀬々敬久の監督デビュー作。原題は『羽田に行ってみろ そこには海賊になったガキどもが今やと出発を待っている』。
 主人公のナレーションに始まり、主人公のナレーションに終わる、瀬々敬久パターンはデビュー作からのものだった。カラミのAV的アプローチもこの頃からのものだった。でもって、お話が全然理解出来ないのも、この頃から変わらない。無理に時間軸をずらしたりはしていないので、本来ならものすごく単純に理解出来る筈の物語なのに、それが出来なくなってしまうのは、おそらく瀬々敬久の過剰な作家性へのこだわりでの所為ある、と勝手に解釈した。単純なものを単純に描けない監督なんだろう、と。

 卒業を三日後に迎えた三人の不良高校生が、なんとなくジャパゆきさんを助けて、いつのまにやらヤクザの抗争(みたいなもの)に巻き込まれる、というとてもぬるいスラップスティックムービー。このやり口は、その後の『HYSTERIC』や『RUSH』に繋がるもので、得意らしき題材を大いに表現した正しくデビュー作的な作品。でも、初めてって事で、熟れていない感じは否めなく、それこそ「ただ単にそういう映像が撮りたかったんじゃないの?」的な意味不明な描写が数多く登場する。でも、それ(飛行機の低空飛行とか船とか)がなんとなくそれっぽく見えてくるので、それはそれでオッケーかなぁ、なんて思うのだが、やっぱり「あそこでなんであいつが殺されなきゃいけないんだ」とか「どうしてお前とお前はセックスをしないんだ」とか、そういう素朴な疑問が山積みになってしまい、物語的に満足出来る代物ではない。「監督は満足しているんだろうなぁ」とは思えるのだけど。
 あと、決定的に弱い部分は主役。一応、多分、モモという不良高校生がヒロインとなるのだろうけど、彼女は途中でヤクザに拉致されてしまい、そのまま大して動く事も出来なかったので、全然主役の機能を果たしていない。で、もうひとり、不良のジョニーという男も主役っぽいのだが、そいつはそいつで“海賊”らしい感じに振る舞おうとはするのだけど、美味しいところはキンギョ(佐野和宏)に持っていかれてしまう始末で、存在感は圧倒的に足りない。じゃあ、キンギョが主役だろう、って事になるが、キンギョはあくまで高校生達を巻き込む側にいるので、主役であってはならない筈。そもそも原題にある様に、海賊(つまり高校生)が主役でなければならないのに、そいつらが全然機能していない。あと、ついでに言及しちゃうけど、教師役の下元史朗は冒頭で微妙に講釈を垂れたので、今回はシリアス系のキャラか? なんて思ったけど、やっぱり情けない役だった。ものすごく安心出来た。

 初々しさと瀬々敬久っぽさに溢れまくったデビュー作らしいデビュー作。これがデビュー作じゃなかったら、結構腹が立ったりもしそうだけど、デビュー作なので許せちゃう。ただね、瀬々監督の場合、今でもこういう作品を余裕で撮っちゃうからなぁ…。