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『籠女 KAGOME』 '00 TJC

脚本・監督:佐々木浩久
原案:小沢和義
音楽:ゲイリー芦屋
出演:吉村美紀・井上尚子・壇臣幸・下元史朗・江見俊太郎・小沢和義


 『発狂する唇』をとんでもないスラップスティックホラーに仕上げてしまった佐々木浩久監督の最新作である。流石に『発狂する唇』程の確信犯的過剰演出こそ影を潜めているが、所々に登場する悪趣味な映像・音楽・セリフなどは佐々木監督のならではのものだろう。
 特にゲイリー芦屋の音楽はなんとも表現し難い雰囲気を醸し出している。『発狂する唇』のミュージカルとまでは行かないにしても、なんとも古臭い、そして、大袈裟なこの音楽に必然性を与える事は難しい。決して2000年に作られたとは思えない程の古めかしさ。それはホラー特有のおどろおどろしいそれではなく、むしろ、円谷プロの子供向け作品における音楽のようだ。黒沢清監督の『CURE』や瀬々敬久監督の『冷血の罠』でも音楽を担当しているゲイリー芦屋なのだが、それらの作品における音楽とこの『籠女』における音楽は明らかに一線を画すものである。映像との整合性を持たないこのわざとらしい音楽によって、作品としての恐怖がより一層浮き彫りになってくるのも確かだ。もちろん、それは違和感に由来する恐怖であり、物語そのものに因るものではない。全くもって、悪趣味な恐怖だ。

 それにしても、『発狂する唇』の三輪ひとみ然り、この『籠女』の吉村美紀然り、主演女優のなんとも言えない雰囲気は確かに魅力的だ。
 ホラー映画の魅力の一つに「美女を虐める」というものがある。恐怖に巻き込まれて、逃げまくり、そして、遂には怪物にいたぶられる美女を見て興奮しようというとんでもなく卑劣な楽しみ方だ。これはホラーの基本として、昔から使われてきた方法論ではあるのだが、この佐々木浩久監督の場合そのやり方が余りにもえげつない。『発狂する唇』では、事もあろうに主人公に死姦を強要し、その上、アナル・ファックまでを強要した。そして、最終的には「業」に理由を求め、絶望を与えた。この『籠女』では、流石にそこまではしなかったが、希望の光は前作以上に皆無である。主人公は理由もないのに恐怖の渦へと落とされてしまうのだ。もちろん、ラストシーンで救われる事もなく、全てが、誰もが絶望の淵へと。こんな虐め方は酷すぎる。悪趣味極まりない。

 悪趣味だけに彩られた演出は、珍しくもなんともない民間伝承をベースとした物語を一瞬にして恐怖の世界へと変えてしまう。つまり、この作品の物語そのものはありがちな昔話であり、それだけでは決して面白いものではないのだ。異常な演出があって初めて作品として楽しめるのである。なんだか勿体無いような、そうでもないような。