| 『岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 EPISODE1』 '01 吉本興業・セディックインターナショナル 監督:宮坂武志 脚本:NAKA 雅 MURA 原作:中場利一 出演:竹内力・野村真美・鈴木希依子・山口祥行・古井榮一・山口剛 ・伊佐山ひろ子・中場利一・田口トモロヲ この『岸和田少年愚連隊』シリーズは、この圧倒的な強さを表現する為に産まれたのではないか、と思わせる程のカリスマ性を持つカオルちゃんこと村山薫。そのカオルちゃんの高校生時代(十五歳)を現在三十七歳の竹内力が演じるというであるから、もう観る外ない。 それにしても、竹内力はいつの間に、あそこまで恐ろしく進化してしまったのであろうか。僕が最初に竹内力を観たのは、多分テレビドラマの中で、その頃の竹内は今よりも痩せていて、正統派のハンサムガイで、決して喧嘩に明け暮れているような風貌ではなかった。勿論、巻舌でもなかったし、台詞もはっきりと発声していた。そう言えば、『ミナミの帝王』の最初の方も今程のドスは効いていなかったはずだ。なのに、いつの間に…。 今回のカオルちゃん役は、今までの竹内力の中でも、最強の部類に入る役である。そして、その喧嘩の強さだけではなく、灰汁の強さにおいても最強だ。 まず、痰の量が違う。カオルちゃんは「ンガーーぺッ!」ってな感じで痰を撒き散らすのだが、その量が半端ではない。人間の喉元から生産出来るであろう許容量を、いとも簡単に凌駕している。そして、それを演じてしまう竹内力の懐の大きさに驚愕するしかない。 次に、表情。カオルちゃんは最強である。喧嘩をし、相手を薙ぎ倒す事が仕事である。そんなカオルちゃんは常に戦いの場に身を置いている訳であり、決して笑う事すら許されないのだ。従って、常に怒り、常にメンチを切っている。だから、カオルちゃんは笑えない。好きな女の子をウォッチングしている時も笑ってないけないのである。必死に笑いを堪え、怒りの表情を浮かべるカオルちゃんは、正に鬼の形相。あそこまで怖い顔は見た事がない。本当に恐ろしい。 この手の喧嘩の達人を描いた作品の多くでは、その達人が実は心優しい一面を持っている、という描写があり、類いに漏れず、カオルちゃんについても、そのような描写があるのだが、残念ながらカオルちゃん、否、竹内力についてはそのような描写が効果を成しているとは思えない。カオルちゃんは何をやっても怖いのだ。それ程までに強すぎるのである。子犬と戯れるカオルちゃんですら十分に恐ろしい。「この人は本当は優しいんだ」という事を心の中で理解しているのだが、それを恐怖が上回ってしまう。本当に恐ろしい。 カオルちゃんを追い続ける高校生・倉本役を田口トモロヲが演じている。こちらは、お得意の灰汁の強い演技で、いつもながらの田口トモロヲなのだが、竹内力のカオルちゃんを前にしては、その灰汁の強さも無に帰してしまっている。お約束の田口トモロヲが本物に適う訳がない。構図としては『極道黒社会』の哀川翔と田口トモロヲとほぼ同じであり、田口はそれなりに重要な役回りのはずなのだが、『極道黒社会』でのターゲットである哀川翔が人間であったのに対して、この作品でのターゲット、カオルちゃんこと竹内力は、最早人間ではないので、田口トモロヲに存在価値を見い出す事も出来ないのだ。兎にも角にも、カオルちゃんの強さだけが際立っている。 また、『岸和田少年愚連隊』シリーズにおいて、カオルちゃんとまではいかないにしても、結構な野蛮人として描かれているイサミちゃん(高校時代は山口祥行が演じ、大人時代は原作者の中場利一が演じる)も、この作品の中では単なる脇役以外の何者でもない。勿論、リイチやガスなど論外だ(中学一年生であるのだが)。 何はともあれ、カオルちゃんの強さ、恐ろしさに尽きる。作品全体の八割方を占めるカオルちゃんの超絶なバトルが本当に凄すぎる。そして、完全に狂気の域に達してしまった竹内力の演技に圧倒されるしかない。 『沖縄やくざ戦争』の千葉ちゃんの役を竹内力にやらせたら、さぞ面白かろうに、『仁義なき戦い』の大友役を竹内力にやらせたら、さぞ面白かろうに、と考えた。 |