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『岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 EPISODE2 ロシアより愛をこめて』 '02 吉本興業・松竹

監督:宮坂武志
脚本:NAKA 雅 MURA
原作:中場利一
出演:竹内力・田口トモロヲ・崎山凛・金山一彦・池乃めだか・中山美保・山口祥行


 2001年度邦画ベスト1は、『EUREKA』であるとか『DISTANCE』であるとか『GO』であるとか言われているが(どれもこれも横文字だ)、誰がなんと言おうと、僕は『岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 EPISODE1』であると確信する(ちなみに、次点は狂いっぷりで『クリスマス・イブ』)。一人の役者の強さをあそこまで鮮烈に表現出来た作品に、そう滅多に出会えるものではない。竹内力という人間の勝利、或いは、カオルちゃんというキャラクターの勝利、とも言えるが、実際にそれを映画にしたのであるから、そこは評価されて然るべきだと思う。まあ、勿論、好みの問題なのかも知れないが。
 で、その名作の続編であるから、期待してしまうのも仕方ない、という話で、普通に面白いくらいの作品で、こっちが満足出来る訳がない。前作を大幅に上回ってもらわないと困る。
 ところが、なんとこの作品、劇場公開のない完全なオリジナルビデオ作品になってしまったのだ。前作はちゃんと劇場公開もしたし、少なくとも長ラン姿の竹内力という事で話題にもなったし、何より作品が面白かったのだから、まさか予算縮減なんて事は思いもしなかったのに、この様だ。残念で仕方がない。(ただ、元々はVシネマ三部作の企画で、話題性の為に一作目だけを劇場公開した、という説がかなり有力ではある)

 まあ、予算の問題や公開方法の問題はあっても、面白い作品は面白い訳であるから、とりあえず、作品を観てみよう。
 ロシアのカオルちゃん的存在が、通天閣に憧れて海を泳いで日本に辿り着く。そして、通天閣に向かう途中、全国総番になるべく、行脚中だったカオルちゃんと東京で遭遇、そのままバトル。そして、岸和田に帰って……。みたいな話だ。前作に増して、とんでもない設定で、かなりの期待が出来る。これで、狂わない筈がない。と、思っていたのだが、意外と普通な作品だった。
 前作では、絶対的な存在、つまり、逸脱したキャラクターがカオルちゃんだけであったので、カオルちゃんの破天荒っぷりだけを描けば全てが成立した。兎に角、カオルちゃんだけを見せる作品だったのだ。
 しかし、この作品では、カオルちゃんだけではなく、ロシアン番長・アリューシャについても同様に描かなくてはならないのだ。そして、そのアリューシャをカオルちゃん級に強く描かなければならない。それが意味する所は、前作で築き上げたカオルちゃんという絶対的な存在の相対化。カオルちゃんよりも強いかも知れない、と思わせるようなキャラクターを登場させる事によって齎されたものは、よりエキサイティングな物語ではなく、より日常性を帯びたカオルちゃんの姿であったのだ。カオルちゃんは絶対に負けてはならないし、負けそうになってもならない。勿論、傷を負ってもいけないのだ。『岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説 EPISODE1』の面白さは、そのカオルちゃんの絶対的な強さにあった。しかし、この『ロシアより愛をこめて』によって、その絶対性にヒビが入ってしまったのだ。
 勿論、竹内力の突き抜けた演技は健在で、それは安心感をも感じてしまうようなカオルちゃんだった。でも、竹内力に絶対性があってもカオルちゃんというキャラクターのそれが揺らいでしまっては、どうする事も出来ない。また、これは仕方がない事ではあるが、アリューシャ役の崎山凛は、はっきり言って竹内力のライバルとしては役不足すぎる。ましてや、竹内力 VS 哀川翔という最高の対決を体験してしまっているから、竹内力とあまり名前も知らない様な俳優に一世一代のタイマンを張られても高揚する事は出来ない。

 やっぱり、カオルちゃんが意味もなく周りの人間共を薙ぎ倒して行く作品が観たかった。兎に角、ただ強いだけの存在が観たかった。或いは、全国制覇、否、全世界制覇を目指したカオルちゃんが世界中を観光がてら戦い歩くだけ、という映画でも良かった様な気がする。