| 『カタクリ家の幸福』 '02 「カタクリ家の幸福」製作委員会 監督:三池崇史 脚本:山岸きくみ 原案:映画『クワイエットファミリー』 音楽:馬飼野康二・遠藤浩二 出演:沢田研二・松坂慶子・武田真治・西田尚美・忌野清志郎・丹波哲郎 「何でも詰めこみゃ良いもんじゃない」なんて事を言って、それなりのバランスの上に成立する作品を評価する人もいるが、それに真っ向から対抗して、「詰め込めば詰め込むだけ、面白い作品が出来るんだ」という事を証明してしまった、作家泣かせの作品が、この『カタクリ家の幸福』である。そして、その「なんでもかんでも詰め込んでやる」という方法論を何の迷いもなく採用出来た三池崇史はやっぱり凄かった。三池崇史に「自由」を与えるとこんな面白い作品が出来てしまうのだ。 三池崇史のフィルモグラフィーを見てみると、コメディらしいコメディとファミリーものが無い事に気付く。あれだけ量産している監督であるのだから、コメディや家族ものの一本やニ本、撮っていてもおかしくないのだが、辛うじてそれっぽいのは『岸和田少年愚連隊』シリーズくらいで、一目にそれと分かる様なものは無い。従って、今回の『カタクリ家の幸福』は三池監督的には初挑戦になるジャンルであり、一体どんな作品になるのか、予想もつかない状況だった。 そして、蓋を開けてみたら、もうびっくり。決して初めてなんて思えない程に面白くておかしくて、そして、心を突き動かされる最高のエンターテインメントがそこにあった。はっきり言って、ティム・バートンなんかで喜んでる場合じゃない。ジョン・ウォーターズなんかで驚いてる場合じゃない。そこら辺のそれっぽい映画を何本か観るのであれば、この『カタクリ家の幸福』一本だけを観れば十分である。 この作品の面白い要素として、まっ先に挙がられるものは、やはり役者のはっちゃけっぷりであろう。ジュリ−が愛の水中花が大霊界が、全てをかなぐり捨て、無邪気に、そして、一生懸命踊り歌い狂う。そこには全くの躊躇も照れも無い。「こんな大物俳優がこんな事を!?」なんていう事を感じる暇も無いし、そんな事は微塵も脳裏をよぎらない。勿論、違和感だって無い。なんと言うか、完璧なのだ。面白い作品が完成する、という確信があるのだ。表現は悪いかも知れないが、“真面目”なのである。だからこそ、面白さが観客に一番シンプルな形で伝わるのである。 そして、やっぱり、三池監督の、最早“確信犯的”という言葉さえ超越したかの様な、なんでもアリ感は凄まじい。ミュージカルというフォーマットだけでも、かなりのなんでもアリなのだが、そこに頼る事なく、いや、ミュージカルである事を忘れさせるくらいに、なんでもアリだ。面白いと思った事を全部やってしまおう、という最もプリミティブなクリエイタ−魂がほぼ完全に近い形で一本の作品として昇華された。 映画というものは、基本的にネタバレをしてしまうと面白くなくなるものだと思う。裏切り・ビックリ・ドッキリというものが映画の醍醐味である。そういう意味で、この『カタクリ家の幸福』は最も映画らしい面白味を持っている。本当だったら、ミュージカルである、という事実も、ホラーである、という事実も知らない方が良い、くらいにも思えるが、まあ、そこら辺は期待する為の要素として。 兎に角、何も考えないで単に鑑賞して、シンプルに映画の醍醐味を最高級に味わえる素晴らしい作品だ。これぞ映画。 |