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『ケイゾク/映画 〜 Beautiful Dreamer 〜』 '00 TBS・角川書店・キングレコード

監督:堤幸彦
脚本:西荻弓絵
出演:中谷美紀・渡部篤郎・鈴木沙理奈・大河内奈々子・小雪・泉谷しげる・竜雷太


 例えば、東映製作・村川透監督の刑事ドラマの様な、所謂“テレビ映画”というやつが、いつの間にかテレビ欄から消え去り、同じ俳優の使い回しで既視感たっぷりのトレンディ・ドラマがゴールデンタイムを支配していたのが、バブル全盛の時代。ちょうどその頃の日本映画も、それ迄の乱作の時代から、大作志向へとシフトされるのだが、よりゴージャスなものを求めるバブル世代にとって、権威のない邦画よりも、権威的で金の掛かっているハリウッド大作の方が魅力的に映る訳であり、日本映画は停滞する。
 バブルが崩壊し、トレンディ・ドラマ的な世界観は過去のものとなり、テレビドラマの世界に変革が訪れる。恋愛ドラマは減り、ホームドラマが復活し、そして、それまで少なかったサイコスリラーものが登場する。時を同じくして、日本映画の世界にも変革が訪れる。大作志向の時代から、低予算単館上映の時代へ。取り上げられるテーマも多様化する。

 堤幸彦はポスト・バブルのテレビドラマ界において、とても重要な人物であろう。『金田一少年の事件簿』を初めとする謎解きサイコスリラーものを数多く手掛ける堤幸彦は、それまで解り易さが重視されていたテレビドラマの世界に、解り辛さ、或いは、演出の個性というものを持ち込んだ。勿論、その題材がサイコスリラーというものであるが為に、実現したものであり、例えば、精神を病んだ犯人の脳内世界であるとか、回想シーンであるとか、解り難い表現に幾らかの必然性がある事も間違いない。しかし、その手法はそれまでのテレビドラマでは成立しなかった、斬新なものである。
 この革新の決定打となったのが『ケイゾク』である。テレビドラマとは思えない程に遊びまくっている映像とセルフコメディに彩られた脚本は、他のテレビドラマを嘲笑うかの様だった。架空の予告編を流してみたり、謎解きをごっそり割愛してみたり、台詞を遮ってCMに入ったり。兎に角、何でもアリで、テレビドラマの限界に挑戦しているかの様だった。

 そして、その『ケイゾク』の映画版がこの『ケイゾク/映画 〜 Beautiful Dreamer 〜』である。テレビ版の雰囲気をそのままに、新たな事件に取り組んでいる訳なのだが、一話完結の事件とその裏にある大きな事件との繋がりで保たれたテレビ版のテンションが、二時間弱の映画の中で再現出来る訳もなく、テレビドラマの映画版にありがちな消化不良は否めない。しかし、事件解決を映画の前半で早々に済ませ、その後延々とサイキックで訳の解らない描写を続ける辺りは、いかにも『ケイゾク』的であり、その観客を置き去りにする世界観には驚きを隠せなかった。あれだけ好き勝手にやられれば、幾らつまらなくても、理解出来なくてもこちらは納得するしかない。

 この映画のやり過ぎ感は面白いとか面白くないとか、そういう問題ではなくって、このやり過ぎ感がテレビドラマと繋がっているという事が重要である。こんな映像を無料で配信するという暴挙には尊敬の念を抱くしかない。というか、スペシャルでも映画でも連続シリーズでもなんでもいいから、『ケイゾク』の続きが観たい。だって、普通に面白いんだもん。(つまり、笑える)