| 『借王(シャッキング)』 '97 日活 監督:和泉聖治 脚本:松本功・旺季志ずか 原作:土山しげる・平井りゅうじ 出演:哀川翔・志賀勝・夏樹陽子・室田日出男 Vシネマのターゲット層は善くも悪くも固定している。決して若者向けではないし、単館系映画を好むオシャレな映画ファン向けでもない。そして、もちろんハリウッドの大作の好むような非映画ファンの一般層向けでもない。では、一体どこをターゲットとしているのか。先ずひとつ目は、所謂ブルーカラーと呼ばれる層。ヤクザ、ギャンブル、エロスがVシネマの主な題材である事を考えると、その事がよく解る。次には古くからの邦画ファンである。Vシネマは元々、ビデオ化する日本映画のタイトル数が絶対的に足りない事から、ビデオ化のみを目的として産まれたものである。邦画ファンの需要を映画館ではなく、ビデオによって満たそうとしたところからVシネマが始まったのだ。従って、Vシネマ作品の多くはかつての日本映画のような解り易い娯楽性を持ったものであり、それはある種の予定調和とも言える。しかし、その予定調和は決して否定するべきものではなく、ユーザーの期待そのものなのである。 原作はリイド・コミックにて連載されていたこの『借王』。その原作に目を通していただければすぐに解る事だが、完全にブルーカラー向けの劇画である。その「ハズレ」のない予定調和の世界観は読者に安心を与え、何度も繰り返して読みたくなってくる。この安心に裏付けされた予定調和は、入り口こそ狭いかも知れないが、一度体験してしまうともう抜けられない。そして、いつしかその世界が唯の予定調和ではない事に気付き、更に中毒性は増す。これは、『借王』の限る事ではなく、Vシネマそのものについて言える事だ。この作品が現在パート8まで作られている事も簡単に納得出来よう。ちなみに、和泉監督は主人公の安斎が15億円の借金を全額返済するまでシリーズを続ける気らしい。一作において1億円の返済がお決まりとなっているので、少なくともあと7作は作られるのだ。 この作品で哀川翔は東大卒のエリート銀行員を演じている。これまでの哀川のイメージを覆す役柄であるのだが、全くの違和感を感じないどころか、完璧なハマり役とも言えよう。言葉少なに静かに狼狽する借王・哀川翔の新たな魅力の発見だ。『修羅がゆく』シリーズとこの『借王』シリーズを並行して観ると役者・哀川翔の深みに触れる事が出来る。 |