| 『新・仁義の墓場』 '02 大映・東映ビデオ 監督:三池崇史 脚本:武知鎮典 原作:藤田五郎 出演:岸谷五朗・美木良介・有森也実・大地義行・大沢樹生・本宮泰風・曽根晴美・隆大介・菅田俊・山口祥行・山下真司・井上晴美・力也・山城新伍・丹波哲郎 深作欣二監督、渡哲也主演、75年東映東京製作『仁義の墓場』のリメイク。『荒ぶる魂たち』に続く、三池崇史&武知鎮典のタッグであり、俳優陣も、そして、配役のパターンもかなり被っている。例えば、主人公に仕える役としての山口祥行とか、主人公が心を許す相手としての美木良介とか、従順さとクレバーさを持ち合わせる部下としての大地義行とか。また、作品のテーマも破天荒型ヤクザを扱ったものであり、その点でも両作は共通している。しかし、決定的な違いがある。 『荒ぶる〜』では主人公の武闘派振りを通して、極道社会の汚さや仁義の重さ、友情などを真正面から描いていた。そして、主人公は確かにとんでもない野獣ではあったが、絶対に仁義を通す人間であり、間違っても道を外れる事はなかった。 この『新・仁義の墓場』での石松もやはりとんでもない野獣である。『荒ぶる〜』の加藤雅也と同等かそれ以上のイケイケヤクザだ。しかし、決定的に違うのは、石松には仁義もへったくれもない。こっちが嫌になるくらいに狂っているだけなのだ。犯すは殺すはで大変な馬鹿騒ぎだ。 この作品は、石松の気狂いぶりを描いた映画である。ちょっとした事で狂ってしまった石松の転がり落ちる人生を彼の狂気のみによって描き出したものだ。だから、この作品にはヤクザ映画では必須となる抗争が一切出てこない。石松を巡る暴力のみが登場するのだ。 深作の『仁義の墓場』では、東映初主演となる渡哲也で撮った。彼岸の住人と言っても過言ではない程に狂っている石川力夫を、東映には馴染みの薄い渡哲也で撮った。これがどうしても、「東映=現実、渡(よそ者)=彼岸」という図式に見えて仕方なかった。だから、その他の実録ものとは確実に一線を画していたし、決して安心して楽しめるような作品でもなかった。見慣れない物を観ている様で、気分が悪くなる様なものだった。とても面白かったけど。 で、三池の『新・仁義の墓場』の方も、岸谷五朗という全くのよそ者で撮られた。それがまたとても良い。見慣れた野獣よりも、彼岸な雰囲気は多く出ていた。また、普段のヤクザ映画で「ヤクは御法度」などときれいごとを並べている俳優がヘロイン中毒の役をやっても、なんとなくしっくり来ないが、よそ者の岸谷がやれば、それもすんなり受け入れられる。ヤクザ映画という世界の中での部外者である男が、作品の中で完全に部外者になっている。説得力満点。 阪本順治監督の『新・仁義なき戦い。』では、部外者である筈の豊川悦司が作品の中の中心に立ち、世界のど真ん中に立つ哀川翔が作品の中の部外者に貶められた。監督が部外者であるのだから仕方がないという事か。 しかし、この『新・仁義の墓場』では三池崇史というど真ん中に立つ男が撮った所為であろうか、理不尽な仕打ちの全てを部外者である岸谷が請け負う形となった。これなら全てに納得出来る。こちらも岸谷の行う全ての理不尽を受け入れる事が出来るって話だ。このリメイクは大成功だったと思う。 |