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『溺れる魚』 '01 東映 エイチ・エム・ピィ 東映エージェンシー

監督:堤幸彦
脚本:横谷昌宏
原作:戸梶圭太
出演:椎名桔平・窪塚洋介・仲間由紀恵・伊武雅刀・白竜・IZAM・渡辺謙


 テレビドラマ『ケイゾク』も面白かったが、それ以上に『池袋ウエストゲートパーク』は面白かった。キャラクターの個性と暴力描写と間の抜けた台詞のバランスが奇跡的であった。確かに物語としては、特に物珍しい訳ではないし、映像的にも『ケイゾク』に比べれば正統的なものだったが、若い俳優達の躍動感に溢れる演技が十分にそれを補っていた。また、題材の同時代性が強い、というのも『池袋ウエストゲートパーク』を面白くした原因の一つであろう。
 で、その『池袋ウエストゲートパーク』で主役を喰う程に目立っていたキングこと窪塚洋介と、大人の象徴として君臨していた渡辺謙を擁して作られたこの『溺れる魚』。今回も各登場人物のキャラクター付けがとても強く為されていて、やはり堤幸彦だな、と思わせる。大人としての渡辺謙や、本人そのままのIZAM、可愛いヤクザ白竜、などは何の違和感も無いどころか、当然の様に受け入れられるのだが、窪塚洋介のキャラ付けがどうも納得行かない。女装好きの刑事というのは、確かに面白いのだけれど、顔だちの綺麗な窪塚洋介が女装をしたところで、あまり面白味も感じられない。『池袋ウエストゲートパーク』のキングが格好良かったのは、あま〜いタッチなのに喧嘩がめっぽう強かったからであって、見た目と中身のギャップが大きかったからだ。こちらは窪塚洋介にそのギャップを求めているから、普通に女装をされてしまうと、逆に違和感を感じざるを得ない。それだったら、椎名桔平の方に女装をしてもらいたかった。
 また、落ち着いた雰囲気の中にとぼけた感じを出す仲間由紀恵は『トリック』の仲間に近い印象で、ある意味安心感の様なものを感じるが、それがまた窪塚洋介に対する違和感を触発してしまう。つまり、安心出来る堤幸彦ワールドの中で、その住人である筈の窪塚洋介だけが、いつもと違う仕事を任されてしまっている様で、見慣れないその仕事っぷりが作品全体のイメージを変えてしまっているのだ。
 とは言うものの、『ケイゾク』や『池袋ウエストゲートパーク』によって、堤幸彦の世界観が個性として定着してしまい、所謂“奇を衒う”という方法論が成立しなくなった、という側面もある。それまでは「えっ!? 窪塚洋介にそんな事させるの?」と思われていた事が堤幸彦の世界では当たり前となってしまい、逆に窪塚洋介に普通の事をさせる方が珍しくなってしまったのだ。だから、女装した窪塚洋介は逃げまくるのではなく、そこでカンフーアクションを見せるべきだった。もしくは、椎名桔平が女装をするべきだった。それが、堤幸彦の個性なのだから。

 しかし、まあ、『ケイゾク/映画』に比べると、かなりまとまった映画になっている。テレビドラマの続編という縛りがないおかげで、かなりの自由度を獲たのだろう。窪塚洋介の違和感こそあるが、この『溺れる魚』は 堤幸彦監督映画の中で最も安心して楽しめる作品なのではないだろうか。