| 『非・バランス』 '01 メディアボックス・日本ビクター・サンダンスカンパニー 監督:冨樫森 脚本:風間志織 原作:魚住直子 出演:派谷恵美・小日向文世・はたのゆう・中村桃花・柏原収史・とまと・土屋久美子・羽場裕一・原田美枝子 恥ずかしい事に、ほぼ全編に渡って涙が止まらなかった。こういうセンチメンタルものを否定する事は多分一生出来ないのだろうなぁ、なんて感じの妙な気分になった。 この物語に中学生日記の様な等身大の少女を見る事は出来ない。オカマの友達がいる時点で、その設定はかなり特殊だし、『Dr. ギグルス』を喜ぶ女子中学生なんてそう滅多に出会えるものではない。だから、本当だったら共感も投影も出来ない筈なのに、びっくりするくらいに感情移入していて、いつの間にやら涙が流れてしまう。エンドロールが終わって映倫のマークを見た時に、脚本とか演技とかそういう事を一切忘れて、物語の中に入り込んでいた自分の姿に気付くという始末。あぁ、これは映画だったんだぁ、って。なんだか、面白いとか面白くないとかそういう問題じゃないんだろうなぁ、なんて変な事を考えてしまった。ホントずるい、こういう映画は。こう絶対に触れて欲しくない部分に触れられちゃった様な気分だ。 この作品を観て、中学生のセンチメンタリズムに抗う方法は存在しないのだ、と確信した。なんと言うか、人間は皆思春期にある、とか、欲望に素直である事の強さ、とか、そんな感じなのだが。 主人公チアキは「クールに生きる」「友達は作らない」という目標を掲げて中学校に進学した。この目標を見て、大人達は「なんて馬鹿馬鹿しい」「恥ずかし気もなく、よくそんな事を言えるなぁ」などと嘲笑するであろう。でも、よく考えてみると、このチアキの目標は大人達の処世術そのものでもあり、決しておかしなものではないのだ(大人は表面上の付き合いをするし、感情を無理矢理にでも包み隠したりする)。 この手の青春センチメンタル系の作品は沢山あるが、その殆どが大人からの視点で描かれた青春である。従って、最初から最後までチアキの様な中学生に対する嘲笑に溢れている。上からの視点というか、なんというか。しかし、この『非・バランス』は違う。チアキに対する嘲笑が今の(大人になった)自分に対する嘲笑であるという事に気付かされれしまうのだ。そして、ひねくれたように見えて、実は思いっきり素直なチアキに、自分を重ねてしまい、大人も中学生もみんな同じなんだという事を無意識的に感じるのだ。「格好つける事は格好悪いよ」みたいな気持ちも「格好良い事はなんて格好悪いんだろう」みたいな気持ちも結局は「格好良く見られたいから格好つけています」という根本に帰る、という事。自分大好き、思春期万歳。 いや、まぁ、何がなんだか解らなくなってきましたが、兎にも角にも、映画を観ているような気がしなかった。実際に世界に入り込んでしまったというか、なんというか…。とりあえず言える事はこの作品が大好きだ、という事と、もう二度と観たくないという事。だって、もう一度観たら、この『非・バランス』が映画であるという事を認識してしまいそうだから。 |