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『黒い下着の女 雷魚』 '97 国映・新東宝

監督:瀬々敬久
脚本:井土紀州・瀬々敬久
出演:佐倉萌・伊藤猛・鈴木卓爾


 「Vシネマ」と銘打ってレビューをしているが、実のところ取り上げている殆どの作品が劇場公開されている作品で、オリジナルビデオ作品は非常に少ない。とは言うものの、全国ロードショーした作品や所謂単館系の作品は取り上げないようにしているので、どうにか許して頂きたいのですが…。ちなみに、このレビューページにある作品群の殆どは配給会社の直営劇場で一週間くらいの“泊付け”公開されているだけであり、その主なターゲットは劇場に足を運ぶ観客ではなく、ビデオレンタルなので、事実上はVシネマとして取り扱って遜色ない……はず。
 しかし、この『黒い下着の女 雷魚』を取り上げる事には、多少の迷いがあった。新東宝製作という事からも分かるように、この映画はピンク映画の範疇に入るのであろう。少なくともVシネマではない。でも、今のピンク映画はあまりに停滞していて、一部の映画ファンにしか観られる事もないし、結局はビデオレンタルでの顧客もそれなりのターゲットだし…、てな感じの思考回路で取り上げる事にした。

 瀬々敬久はもちろんピンク映画出身だったがこの『雷魚』の前作『KOKKURI』で商業映画でビューを果たしている。その所為かこの『雷魚』も、ピンク映画的な濡れ場は最低限に抑えられている。やはりエロティックなシーンもあるのだが、決してそれを目的に出来る程の代物ではない。つまり、抜けない。
 抜く抜かないは別として。
 この作品のなんとも表現し難い虚無感は観ている者に絶望を与える。対象を間違えた復讐が無駄な殺生を産み、その殺生は再び繰り返される。彼女は生きたいのか、死にたいのか、絶望に打ちひしがれているだけなのか、それとも性行為に耽りたいだけなのか。そんな不安定な世界は、妙に透明感のある片田舎の風景の中でただ歪み続けるだけだ。観ている者は楽しみどころを見失い、無理矢理その世界に没頭させられ、絶望を覚える。せめて、もう少し性行為が長く続いていれば。そんなどうしようもない欲望を持つ事くらいでしか、その絶望を緩和する事が出来ない。
 にしても、ヘルニア持ちの主人公・紀子の腰に捲かれたコルセットはなんとも滑稽ではあるが、それでいて艶かしくもある。この感情の先には、禁忌的なサディズムや肉体改造というものがあるのかも知れない、と自らが持つ未知の性的嗜好を垣間見てしまった。

 この作品は実際に起きた事件を元にして作られた。それを聞いて、とても嫌な気分にさせられた。