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『極道黒社会/RAINY DOG』 '97 大映

監督:三池崇史
脚本:井上誠吾
出演:哀川翔・田口トモロヲ・高明駿(ガオ・ミンチュン)・陳仙梅 (チェン・シエンメイ)


 雨の中、監督三池に走らされる哀川翔演じる岸田は、決して躍動的でも情熱的でもなく、ただただ孤独である。何の目的もなく、何に依存する訳でもなく、異国の地で殺しに手を染める。他人の生を操るという事は、生命に執着しない事でもあり、また、自らの生を最大限に肯定する事でもある。生きる事を楽しみ、人生を謳歌しよう、などと考えているはずもなく、ただ「生きる」という事だけを目的に据え、時間が過ぎ去るのを待ち続けているだけなのだ。
 そんな主人公・岸田のニヒリズムを岸田を追跡する男・本阿弥と対照的に描いているのだが、いつの間にかその立場は逆転している。生きる目的を獲てしまった岸田とその岸田という目的を失った本阿弥。それは、生きる目的を自分に置くか、家族に置くか、という問題に帰着する。岸田への復讐、つまり、自らのプライドの為に生きる本阿弥。息子という目的を見付けた岸田。守る者があるからこそ、生きる事が出来るのだ。守る者があるからこそ、殺せるのだ。

 アクション、人情、雨、電流、哀川翔。あらゆる三池崇史の要素が詰まった傑作だ。そしてまた、胡散臭い台北の街は三池の世界観に驚く程合致している。この世界観が後の『日本黒社会』『DEAD OR ALIVE』へと広がる事となる。台北であろうが新宿であろうが、三池の手に掛かれば一瞬にして血腥い欲望渦巻く夢の世界に変わってしまう。見なれた風景をもリセットしてくれる三池崇史の映像世界に引き込まれるばかりだ。

 10年間で30本以上の作品を監督している三池崇史。10年間で120本以上の作品に出演している哀川翔。日本映画界に輝く二人の鉄人が初めて交錯したのがこの作品である。そして、この歴史的接触が日本の映画界を新たなフェイズへと導くのである。