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『冷血の罠』 '98 大映

監督:瀬々敬久
脚本:井土紀州・瀬々敬久
出演:哀川翔・西島秀俊・朝岡実嶺・下元史朗


 ホラーでもサイコスリラーでもそうなのだが、謎解きの部分に驚かされる要素や予想も出来ない要素がないと、はっきり言って面白くない。また、たとえ犯人がすぐに分かってしまっていても、その犯人が犯罪を犯す理由の部分にとんでもない秘密が隠されていないと、観ている者は納得出来ない。つまり、映画とは観客と制作側の騙し合いで、観客はその闘いにどうしても敗れて帰りたいのだ。もちろん観客は負けないように頑張る。でも、負けたい。闘って負けたい。一生懸命闘って、それでもなお制作側の出してくる技がそれ以上に強力なものである事を望んでいるのだ。
 この『冷血の罠』は一般的に言われるサイコスリラーものになるのであろう。連続的に起きる殺人事件、それを追う妹を殺された探偵。まあ、サイコスリラーものとしての駒は揃っている。しかし、揃っているだけだ。全然面白くない。
 まず、謎解きに納得出来ない。どれがどうなってそういう心理状態になるのか、何故そこで犯人は犯罪行為に手を染める事となったのか。それらの重要な部分を一応は説明しているのだが、決して驚くようなものではなく、その上、意味が分からない。そんなもので納得出来る訳がない。あるチンピラ(犯人ではない)を探偵が絞り上げるシーンでのチンピラの台詞。
「この街にはなぁ。俺みたいな奴がいっぱいいるんだよ!」
 つまり、街が悪いのか?でも、お前は犯人じゃないんだろ?謎解きは?観る者はどうしていいのか分からなくなる。せめて、闘いたかった。制作側は観客との騙し合いを放棄してしまったのだ。
 もちろん、ラストシーンも意味が分からない。しかも、中途半端に意味が分からない。こんなどっちにも転ばないような意味の分からなさは要りません。やるなら徹底的に意味の分からない作品を作って欲しかった。

 2001年6月に劇場公開される哀川翔プロデュース作品『RUSH!』の監督はこの『冷血の罠』の瀬々敬久である。元々は哀川翔が製作・監督・出演の3役をやるはずだったのだが、どうしても哀川翔を主役に据えなくてはならない、しかし、哀川は監督か主演のどちらかにしか全力を注ぐ事が出来ない、という事情から瀬々監督がメガホンを取る事になった。『RUSH!』はどうやらかなりの力作であるらしいが、この『冷血の罠』の失敗があるので、少々気掛かりだ。これが杞憂に終わる事を祈ろう。