| 『RUSH!』 '01 エルク・インフィニティ 企画:あいかわ翔 神野智 監督:瀬々敬久 脚本:瀬々敬久 井土紀州 出演:キム・ユンジン 哀川翔 柳葉敏郎 大杉漣 阿部寛 峰岸徹 麻生久美子 千原浩史 ハニホー・ヘニハー 哀川翔が企画し、物語のプロットを立てた意欲作。元々は監督もあいかわ翔である筈だったのだが、監督・主演の二役に全精力を注ぎ込む事が出来ないと判断した哀川翔が、監督補をやる予定だった瀬々敬久にメガホンを託した。脚本が、瀬々敬久・井土紀州という面子であるからだろうか、とても瀬々敬久っぽい作品に仕上がっている。時間軸を交差させて、最終的に物語が収束する手法などは『HYSTERIC』そのままだ。正に、映画的な手法であり、映画が好きな監督が撮った映画である。でも、それだけではない。瀬々敬久っぽいのは確かだが、それだけではない。 瀬々敬久の作品は「面白いのだけど、なんだか突き抜けない」という印象が強い。黒沢清を意識し過ぎていたり、似合わない不良性を求めてみたり、物語中盤で明らかな失速を見せたり、なんだか中途半端な雰囲気が漂っている。ピンク映画と一般作品の間にある“溝”の様なものを埋められないのであろうか、などとも考えてしまう。九十分観るのが辛い、というのが本音だ。 しかし、この作品については、その中途半端さを感じる事がなかった。“笑い”を意識した台詞も疾走感も全てが世界の中にハマっていた。一世風靡時代の哀川翔と柳葉敏郎を観ているかの様な錯覚に陥る程に。 この作品は二時間弱もある。この手の作品では比較的長い部類に入る。しかし、物語が三部構成になっていて、その三つの物語が最終的に収束するという手法(実は、収束していないのだが)によって、観客は“飽き”という感情を抱かずに済んだ。また、それぞれの物語がまるで大友克洋の漫画の様にスラップスティックに展開するので、単純に「次はどうなるんだろう。これはどこに繋がるのだろう」とワクワクしてしまうのだ。とても単純で、解り易くて、面白い、というとても有り難い作品だ。 瀬々敬久の事だから、全編をハチャメチャにする事などないだろう、どこかに“落とし”を挿入して、軽い芸術性の様なものを見せてくるだろう、と、高を括っていたのだが、まんまと騙された。あれよあれよという間に転がり続ける物語に驚くと共に、気持ちの良い裏切りを感じた。ラストシーンなどは本当に喜ばしいくらいの裏切りであり、希望に満ち溢れていた。 この作品は、閉塞された日本映画に、新たな道を提供するものであろう。だなんて、絶賛してしまうのはどうかとも思うのだが、それくらいに面白いから仕方がない。否、はっきり言ってしまうと、このスタイリッシュ感はそれほど好きなものではないし、恋愛とかよりももっとコテコテとした人情劇があった方が面白いとは思うのだが、ラストシーンに感動してしまった手前、この作品を悪く言う事は出来ない。本当に面白いし。楽しめるし。 哀川翔は面白い。というか、面白いものを作ろうとしている。多分、これがこの作品に対する評価として最も的を射ている言葉だと思う。そのパッションが空回りする事なく、しっかりと具現化されたのがこの『RUSH!』だ。とんでもねえと思う様なシーンも残酷なシーンも変態チックなシーンもないが、動き回る役者達と個性的なキャラクターと終わる事を知らない物語がここにはある。これらがあれば映画は絶対に面白くなる、という事を証明してくれる。奇抜なアイディアだけが映画を面白くするのではない、という事を哀川翔が証明してくれた。 |