| 『龍虎兄弟』 '02 『龍虎兄弟』製作委員会 監督:OZAWA 脚本:辻裕之・OZAWA 出演:哀川翔・小沢仁志・小西博之・中島宏海・オン・スイピン・天本英世・夏木陽介・清水健太郎 漢民族は血の繋がりに重きを置き、極道は盃に重きを置く、というアジア系(もしくは新宿系)ヤクザ映画の常套を覆す異色作。 日本でヤクザをしている龍虎兄弟(翔&仁志)は、中国から来たボートピープル。実の母親を殺した武田組の親分(シミケン)に惚れ込んで、仁侠道へと足を踏み入れた。そして、自らの手で実の父親を殺した。 そんな二人の下へ、腹違いの弟・王が中国からやってきて、二人に復讐を仕掛ける。武田組親分は王に殺され、泥沼の弔い合戦が始まる…。 というお話。まず中国人であれば、父親を殺した男に惚れ込むという事は有り得ない(ヤクザ映画の中では)。そして、更に中国人が兄弟で殺し合うという事など有り得ない(ヤクザ映画の中では)。中国人に対して、盃などという形式は全く意味を為さない筈なのに、主人公の二人はそれこそを重んじ、事態は最悪に進んで行く。もうそれは、スプラッターホラー的な展開に。「民族の誇りを失った中国人は厄災を齎す」という教訓めいたものすら感じる。そして、更に、親分は自分の余命が少ない事を知って、そこで跡目を発表するのだが、その答えがなんとびっくり「組を二つに割る」。極道にあるまじき発言。親分こんなおかしな事を言ってしまう様な組であれば、それはそれは凄惨な仲間割れに発展するだろう。自業自得だ。 そんなこんなで、かなり常軌を逸した物語であった。中国人のお話としては、完全に有り得ない。しかし、これを海を超えたヤクザ通しの抗争として捉えるのであれば、辛うじて納得も出来る。 でもって、それを描くのはOZAWA。まるで三池崇史の様な過剰演出を多用していて、それこそテーマ的にも近い『DOA』を観ているかの様な錯覚に陥る程。途中、兄弟は腕を1本ずつ敵に狩られてしまうのだが、それが単なる過剰演出の一環かと思いきや、実はそうではなくてラストにおいてその必然性が証明される辺りは、唸らせるものだった。でも、それが結局『DOA FINAL』的な融合だったりもして、再び三池崇史が目の前をちらつく。OZAWA版『DOA』という印象がいちばんしっくり来てしまう(ちなみに、三池監督も出演している様なんだけど、どこに出てたのか解らなかった)。まぁ、もちろんパクりっていう雰囲気は一切ないけど。 確かに三池崇史的なイメージではあるけど、OZAWAがアクション一辺倒にならず、しかもハリウッドへの憧憬も見せずに、こういう作品を製作する様になった、ってのはかなりの成長なのだろう、と思う。ひとりよがりになる事なく、一人前の職業監督になったのだ、と。おそらく、キャスティングにおける“条件”であったとも思われる清水健太郎に老け役をやらせるのなんかも、なかなかな思いっきりがよくて、格好良い。しかも、シミケンもシミケンでいつもの調子でやってはいるんだけど、絶妙に頭の悪そうな感じが出ていて、好印象。 随所に光るセオリーからの逸脱が、結構なワクワク感を産み出す、ヘンテコな作品。漢民族モノの中では、おそらく歴史に刻まれるべき作品である。 |