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『新極道伝説 三匹の竜』 '99 東映ビデオ

監督:水谷俊之
脚本:岡芳郎
原作:飯干晃一
出演:哀川翔・リ・イエン・朱迅・山田辰夫・寺島進・國村隼・大杉漣・小沢仁志


 今となっては新宿の街の幾らかを台湾マフィアが仕切っているという事は誰しもが知っている事であり、新宿を舞台としたヤクザ映画で中国人を無視する事は出来ない。しかし、一昔前のヤクザ映画や地方都市を舞台としたヤクザ映画では、全くと言っていい程、台湾マフィアが登場しない。まあ、馳星周『不夜城』のヒットが無ければ、現在のヤクザ映画でも台湾マフィアが無視されていたかも知れない、という可能性を否定出来ないのも確かなのだが、兎も角、ヤクザ映画で中国人を避けて通る事が出来ない、というのが現状である。ヤクザの社会やヤクザ映画というものは一般社会を反映し、時代時代の風俗を如実に表現するものであろうから、至極当然の話ではある。
 そして、この『新極道伝説 三匹の竜』は、台湾マフィアが台頭する前夜を描いた作品であり、現代的なヤクザ映画と旧態依然としたヤクザ映画の掛け橋となるべき作品だ。製作されたのは九十九年なのだが、その舞台となるのは、もう少し前の話、つまり、バブル経済崩壊以降の九十年代前半から中盤当たりに掛けてであろう。

 中国人は、「面子」を重んじ、金の為にはどんな事でもする、そして、家族に対する意識が異常に強く、裏切る事を知らない、と表現される事が多い。実際のチャイニーズ・ファミリーが本当にその様なものなのかどうかは僕の知るところではないが、少なくともフィクションの世界ではそれがステレオタイプの中国人(マフィア)である。この作品の主人公の一人・林もまた、その様な中国人(台湾人)の一人であるのだが、どこか昔ながらのヤクザの様な「浪花節」的な感情を持っているのが興味深い。林は単に冷酷な訳ではなく、寧ろ冷静に自己の判断の下に行動する。ひとつのルールだけに依存するステレオタイプの中国人とは少し異なる。
 この理性的な林の対照として描かれているのが、昔ながらの広島ヤクザ・中堀(寺島進)である。『沖縄やくざ戦争』の地井武男の様に、弱いくせに威勢を張って、能無し振りを発揮する。ヤクザ・中堀と台湾人・林のコントラストが、変わり行く新宿の勢力地図と、ヤクザ社会のパラダイム・シフトを印象的に描いている。ただ、情けなく、そして、有りがちに散って行く中堀に幾らかの同情を覚えてしまうのだが。

 物語的には、男の友情を軸とした分り易いヤクザドラマで、それなりに楽しめるものなのだが、哀川翔の使い方が、あまりに代わり映えのしないもので、正直不満を感じてしまった。また、折角小沢仁志を出しているのだから、哀川翔と組ませないで、とんでもないヒールに仕立て上げて欲しかった。哀川・OZAWAのタッグに対抗するのが、老け役の大杉漣と山田辰夫では、結果が目に見え過ぎている。そして、伏線を張るだけ張って、結局ただピストルを撃つだけだった小沢仁志の扱いの悪さ、というか、脚本の適当さにはがっかりさせられるしかない。勿体無い作品だ。林の妹の叶わぬ恋に大きく時間を割くくらいならば、主要な登場人物をもう一人くらい殺しても良かったのではないだろうか。