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『サソリ 女囚701号』 '98 ビジョンスギモト

監督:新井良二
脚本:後藤大輔
原作:篠原とおる
出演:小松千春・木内美穂・坂上忍・横須賀蓉美・かとうあつき・田口トモロヲ


 『女囚』シリーズ、『ZERO WOMAN』シリーズ、『82(ワニ)分署』シリーズなど、定番セクシー・フィーメイル・アクションを幾つも産み出す原作の篠原とおる。Vシネマの歴史において、篠原とおるを無視出来ないのは当たり前。それだけではなく、70年代の混沌とした東映映画の歴史においても、篠原とおるは重要な位置を占めている。梶芽衣子の美しさが際立つ72年の『女囚701号 さそり』、とんでもないアナーキーと倫理観の逆転を描いた『0課の女 赤い手錠』など、この手の映画が好きな人々には垂涎ものの作品ばかりだ。これらの作品群の延長線上に悪趣味なドキュメンタリー映画を配置して、物知り顔で卑猥な視線を送るのも一興、単なるエロス映画として女性の裸が出てくるシーンを悶々と待ち続けるのもまた一興。とにかく、楽しみ甲斐があり、深みのある映画だという事は確かである。篠原とおるの原作はいい意味での安全牌として日本映画界に欠かせない存在だ。

 この『サソリ 女囚701号』は久々に『女囚』シリーズのメインストリームとなる作品だ。薄汚い権力を持つ人間達と正義を貫くヒロインの余りにも解り易い対立構造は観客に安心感すら与え、そして、完璧にフォーマットに踏襲した何の捻りもないラストシーンだって許せてしまう。予定調和は決して脚本の手抜きではないという事を証明するには十分な出来であろう。観客の求める展開を体現出来る物語などそうあるものではない。期待を裏切らない脚本はそれだけで価値のあるものなのだ。そして、この素晴らしき予定調和は、やはり原作の篠原とおるに因る部分がかなりの割合を占めているであろう。

 初期の『女囚』シリーズでは梶芽衣子というパーフェクトなヒロインを産み出した。彼女程のヒロイン像を小松千春に求める事は酷な話なのかも知れないが、比べてしまうのは仕方ないだろう。しかし、小松千春は十分にヒロインとして活躍した。前作『SASORI IN U.S.A.』での斉藤陽子とは全く比べ物にならない程の素晴らしい演技を見せてくれた。女優としてのサバイバルを賭けた小松千春とアナウンサー上がりで企画ものの域を出ない斉藤陽子とではその悲愴感のレベルがまるで違う。切迫した状況が切迫した演技を産み出すのである。底辺に貶められた女優の貪欲な演技こそが篠原とおるの混沌にハマるのである。

 忘れ去られた邦画の混沌がここにある。邦画はまだ死んでいないという事を証明する為にも、こういう予定調和が必要なはずだ。