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『実録・瀬戸内やくざ戦争 伊予路水滸伝』 '03 プラウドマン

監督:石原興
脚本:菊地昭典・村上和彦
原案:村上和彦
出演:翔 ・渡辺裕之・遠藤憲一・山田辰夫・山口仁・橋本真也・岡崎礼・謙吾・ジョニー大倉・清水健太郎


 ヤンキーモノのVシネマには何本か出演していたが、ヤクザ映画での主演は初となる横浜銀蠅の翔。もしかしたら、これが最初で最後になってしまうのかも知れない。

 組織の鉄砲玉として殺人未遂を犯した主人公。5年の服役を終え、シャバに戻り、再び第一線で活躍する、という話。翔の出所を出迎えるシーンのリアリティはズバ抜けている。というか、もうこの部分だけはノンフィクションなので。
 出戻りヤクザの話だと、服役中に変わってしまったシャバの空気に馴染めず、いろいろと葛藤するのが常なのだが、この作品ではそれは一切なく、主人公はいきなり普通のヤクザとして頑張ってしまう。それがなんとも気持ち悪い。服役前の兄弟分が裏切りを見せたりするのが、ヤクザ映画のセオリーなので、何もなかった様に話が進んでしまうと、拍子抜けしてしまう。それだったら、主人公が殺人未遂を犯す部分を描く必要が全くない。アレは何か、単なる時間稼ぎなのか?
 で、物語は、大阪から新居浜に攻めてきた遠藤憲一との抗争へと発展する…、筈なんだけど、目立った殺し合いは行われない。刑事ドラマの様な謎解きが大部分を占め、それが解かれて「いざカチコミだ!」ってなると、今度は義理人情系仁侠路線よろしく、暑苦しいくらいの御託が並べられ、ヤクザ共は戦わない事に納得する。特に主人公の翔は兄貴分に対して余りにも従順すぎて、ちょっとヤクザとしてはどうなのかなぁ、なんて心配してしまう程だ。まぁ、最終的にはガッツリ抗争へと進むので、どうにかその心配も解けたのだけど、やるんだったら、最初っからガツンと攻め込むべきである。兄貴分の陳腐な講釈に心動かされている様じゃ、ヤクザとしては失格だ。

 正直、翔はあまりヤクザに見えなかった。どうしても軽い雰囲気を感じてしまう。“はえーヤツ”とリアル服役の所為なのか、不健康っぽく痩せこけていて、血気盛んな印象はほとんどない。ヤクザとしていちばん脂が乗り切っている頃の役なのに、そのおやじ役であるシミケンの方が黒く光って太っていて、血の気がたっぷり、ってのはどんなものかと。確かにシミケンは異常だけども。
 翔以外でも橋本真也や謙吾といった非役者系の役者が出演していて、その全てがこれまたヤクザっぽく見えない。破壊王はそのツラの優しさっぷりが滲み出てるし、謙吾はそれこそ格闘かにしか見えない。比較的出番の多い彼等が、あまりヤクザらしくなかった、っていうのは作品全体のテンションをかなり下げてしまっていた。一方で、渡辺裕之、山田辰夫、ジョニー大倉といった常連ヤクザをほぼチョイ役くらいの扱いで登場させてたりもして、ちょっとキャスティングに無理があり過ぎたのではないか、なんて思う。そういう贅沢な使い方をしないで、主役は別としてもそれ以外の重要なキャストを正統派な感じで選べば、翔のらしくない感じを補えたかも知れないのに。

 かなり物足りない作品だった。続編を観たいとは思わない。というか、まぁね、多分続編出来ないけどね。