| 『死びとの恋わずらい』 '01 アートポート・テレビ東京メディアネット・松下エージェンシー映像製作部 監督:渋谷和行 脚本:友松直之 原作:伊藤潤二 出演:後藤理沙・松田龍平・秋吉久美子・三輪明日美・高橋慎二・三輪ひとみ・斉藤洋介・本田博太郎 伊藤潤二は決して恐怖を描いている訳ではない。幽霊も怪物も登場するのだが、それらのものが“死”を想起させる単純な恐怖とは成り得ない。なんとも表現し難い“違和感”の様なものがそこには存在し、それは「恐怖」というよりも「不思議」なのである。それは、夜思い出して一人でトイレに行けなくなる様なものではなく、ともすれば思い出し笑いをしてしまう様なものだ。 そんな伊藤潤二作品を映像化するにおいては、二つの方向性がある。一つは『富江』パターン。怪物の持つ恐怖を軸に伝統的なホラー映画に仕立て上げる方法だ。そして、もう一つは『うずまき』パターン。その不思議な世界観を軸に、物語などを極力排除して、雰囲気で押し通す方法だ。(どちらが良いとか悪いとか、そういう問題は別として) この『死びとの恋わずらい』は、ちょうど二つの中間点に位置する作品である。映画における物語性をを保ちつつ、伊藤潤二の不思議さを表現している。もちろん、伊藤潤二の原作そのものがストーリー性の強いものであるという側面もあるのだが。 お話の展開は、はっきり言って無理矢理なもので、原作を完全に無視している。これは、映画的な解り易さ、或いは、演出のし易さを求めた結果であろう。確かに、あまりに伊藤潤二的ではない展開は観る者を動揺させてしまうが、あの原作をそのまま映像化して、果たして映画として成立したのだろうか、という事を考えるとこの脚本に納得するしかない。これは『富江』や『うずまき』にも言える事で、伊藤潤二原作の作品では観客にある程度の妥協が要求されるのだ。仕方ない、と思うしかない。 と、色々歩み寄りながらこの作品を観ていたのだが、それでも作品全体を通して気になりまくったのが、後藤理沙の白痴丸出しの演技と美少年とは程遠い松田龍平である。でも、まあ、この二人の素人俳優について、云々語ってもどうしようもない話だ、なんて事を言ってしまっては、身も蓋もないが、実際問題もっと他のキャスティングはなかったのだろうか、と思ってしまう。うーん、なんだかなぁ。 あともう一つ、三輪ひとみ。こちらは、妹の明日美嬢同様、いつもの弾けっぷりで全てを持って行ってしまったのだが、その刺青があまりにショボくて、がっかりさせられた。メイキングを見る限りでは、本職の彫師によるものだと思われるのだが、ほぼ一色で描かれているその絵に全くの迫力もエロティシズムも感じる事が出来なかった。折角の全身刺青なのだから、もっと気合いの入ったものにして欲しかった。つっても、この作品のクライマックスをさらっていったのは主役の二人ではなく、ひとみ嬢だったって事だけは間違いない。 ちなみに、明日美ちゃんの方は、優等生役の微妙な空回りっぷりが愛らしかった。予定調和的に死んで行くのもなかなか良い。 原作を忠実に描いたのであれば、脇役の三輪姉妹においしいところを持って行かれる事のなかったであろうこの作品。主演に優しくない脚本の一例。 |