| 『変態テレフォンONANIE』 '93 国映 脚本・監督:佐野和宏 出演:佐野和宏・岸加奈子・梶野考・高木杏子・上田耕造・セニョール・ヨネ・津崎公平・今泉浩一・佐野竜馬・佐野健介 自作自演の佐野和宏。自らの実子を登場させてまでも全てを語り尽くした、といった感じであろうか。少々押し付けがましいくらいにメッセージ性の強いピンク映画。 機密を持ち出し逃走する自衛隊員(佐野)とその妻(岸)。その二人を追う二人の自衛隊員。自作の映画を上映する為に田舎町を渡り歩く映画青年。そして、妻の妹。これらの登場人物達の機密とセックスを巡る人間模様が、ダイナミックに展開される。作品内作品とも呼べる映画青年の8ミリ作品が要所要所で挿入され、全体が抽象を孕む混沌へと誘われ、メッセージ性は更に加速する。またカラミは本当に申し訳程度でしか描かれておらず(時間的にも本当に少ない。作品内の5分の1にも満たないであろう)、監督佐野和宏が思う存分やったのだろう、と思う。 考えるべき点はかなり多い作品であり、その全てが人間の根本に触れる様な、最早誰1人として答えを出す事の出来ない、或いは答えを出す事を諦めてしまった大きなテーマを内包している。60分程度の映画の中で表現するには余りにも大きすぎるテーマであるから、消化不良が否めないのも事実ではあるが、個性的なキャラクターとしっかりとしたオチ、そしてラストシーンのセンチメンタルによって、作品の体裁を保つ事が出来ており、観終わった後の不快感は最小限に抑えられている。ただ、例えば、追う側の自衛隊員が同性愛者で殺人好きである理由とか、映画青年がまるで永井豪の漫画に登場する知恵遅れの様である理由とか、死期を待つだけの妻の父親の意識はあったのかどうかとか、一向に答えが出なさそうな具体的な表現が多々あるのも事実である。おそらくそれらが過剰な演出に見えてしまい、“押し付けがましさ”に繋がるのであろう。 自衛隊の機密というイデオロギーにも発展しそうなテーマを扱っているので、若松孝二の様な左翼的思想が展開されそうなものだが、映画青年を登場させ「映画で飯を喰うのは大変だ」などという台詞を吐かせ、その上、実子を登場させているので、やはりこの作品は監督自身に向けられたものであると確信する。あくまで自己言及。ミクロの視点で描かれた作品なのだ。監督自身の視点による人間の根本、とりわけ家族を描いた作品。だからこの作品によって観客それぞれの家族を考えさせられる事はあっても、家族という形態そのものについて普遍性を伴う考えを齎される事はない。 ところが、多少の“押し付けがましさ”によってその普遍性を表現しようとしているのが見えてしまったのが残念だ。当時の佐野和宏の若さがそうさせてしまったのであろう。一般化され得ない監督の考えを表現によって一般化しようとする若さだ。その若さが押し付けがましさを呼び、作品に二面性を与えた。しかし、その二面性も“面白い”の範疇に収まっているので、許せちゃったりもする。 強いメッセージと面白い脚本、映像の魅力もある。確かに、メッセージ性の強さやそれこそ“ONANIE”にもなりかねない監督の自由さに、嫌悪を抱く観客もいるかも知れないが、単純に“面白い”作品である事は間違いないと思う。のですが、どうなんでしょう。 |