| 『兎 野性の闘牌』 '98 ミュージアム 脚本・監督:薬師寺光幸 原作:伊藤誠 出演:松田純・中野英雄・永山たかし・蛭子能収・安岡力也・松田ケイジ 近代麻雀オリジナルに連載されている人気マンガのVシネマ化なのであるが、この手のマンガの映像化にしては比較的原作を忠実に再現している。そして、それはストーリーや設定などの細かい点での再現ではなく、作品の醸し出す雰囲気の再現だ。 原作付きの映画は善くも悪くもその原作のイメージに左右されがちだ。例えば、何度となく映画化されているつげ義春の作品は、原作の作風があまりに個性的であるが故に、映像化して尚つげの世界観を保つ事は難しい。この場合、原作と映像を直結する事が難しくなり、原作のイメージを持ったまま映画を観た時の違和感を拭い去る事は出来ない。また、これは逆のケースであるのかも知れないが、望月峯太郎原作の『バタアシ金魚』においては、牧歌的な風景をよりダイレクトに描き出す映画というメディアが幸いして、ノスタルジックな原作の世界観を一層引き出す結果となった。これは、原作のイメージの増長という点において、成功した例であろう。少なくとも、原作を知ってしまうと、その映画化に原作のイメージのトレースを求めてしまうのであり、そのトレースがどれ程までに効果を為しているかを見てしまうのだ。 原作のイメージを壊さずに表現出来ているという点で、この『兎 野性の闘牌』はよく出来ている作品と言えよう。厳しい勝負の世界に身を置く高校生達には重すぎる緊迫感や、彼等の若さに由来する楽観性が作品全体を通して自然に伝わってくる。また、それだけでなく、キャラクターと俳優のイメージも驚く程に合致しており、何の違和感も感じない。麻雀の技術論を全くと言っていい程、排除している点もまた然り。 しかし、原作にあまりに忠実である為に、多少の物足りなさを感じてしまうのも確かだ。マンガでは表現出来ないような、ダイナミックな動きや、繊細な表情といったものまでもが無いものとされてしまい、正に一枚絵の世界観となってしまっているのだ。『バタアシ金魚』のように原作を超えろ、とまでは言わないが、映像ならではの特別な表現があっても良かったのではないかと思う。 『殺し屋 -1-』が三池崇史監督で映像化される。映像のなんたるかを知り尽くした三池監督であるから、とんでもない作品に仕上がるのであろうが、原作のイメージにこだわり過ぎて、中途半端な結果になって欲しくはない。 |