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『VERSUS』 '01 ウェブコプロデュースカンパニー・ナパームフィルムズ

監督:北村龍平
脚本:北村龍平・山口雄大
出演:坂口拓・榊英雄 ・松田賢二・新井雄一郎・松本実・吉原歩・三坂知絵子


 テレビゲームにおける善悪の概念は、一般社会におけるそれとねじれの位置にある。プレイヤーの意志は一切排除され、ゲームの世界の中だけで成立する概念によって、全てが進んでいく。プレイヤーは主人公を操作するという役割を与えられてはいるのだが、そこに大きな意志がある訳ではなく、ただただミッションをクリアする事だけを要求され、物語を形成する事は許されない。
 この様に考えると、ゲームにおいてプレイヤーは絶対的に主役になる事は出来なくなり、いつまで経っても制作者に対して下位のものとなるのだが、プレイという物理的なゲームへの介在によって、その関係性は破棄されるのだ。プレイヤーは、主人公を生かすも殺すも自由だ。その点において、制作者より優位に立ち、ゲームの世界の中では神となる。
 しかしながら、物語を作れない、という点においては、何をどうしても覆す事が出来ない。プレイヤーは与えられた結末に向かって、物語を進めるだけの道具に過ぎない。ゲームの中の概念に疑問を持つ事は一切許されておらず、自己の意志をもってゲームに疑問を持ったのであれば、リセットボタンを押すしか選択肢はない。
 結局の所、プレイヤーにとっては余りにも不自由なものがゲームである。プレイヤーを否応無しに究極のニヒリズムへと追いやる。でも、ゲームは大人気。それはなぜか。
 それは、ゲームにおいてシナリオ(物語、脚本)が絶対的に軽視されているからである。ゲームにおいて重要なものは、操作であり映像である。戦う事に対する目的は決定的に重要視されない。物語をいちいち理解しなくても、エンディングまで行く事は容易く、しかもそうやってクリアしてもゲームの楽しみは半減しないし、ゲームの本質から逸れる事もない。ゲームとはあくまで動かす楽しみと、動かしているものを鑑賞する楽しみなのだ。

 この『VERSUS』は、正にゲームである。ミニマムな台詞がそれを象徴するかの様に、ただただ戦いだけが繰り返される。何が正しくて、何が正しくないのか、などという事がほとんど気にならないくらいに、人物達が縦横無尽にスクリーンの中を動き回る。戦いの後の結果ではなく、単なる決着が山積みされていく。ただの戦いだ。
 物凄く自己完結性の強い作品であり、観る者の意志が介入する隙間は一切ないだろう。話の行く末など全然気にならないし、バトルスタイル以外にキャラクターに対する感情移入は出来ない。「僕だったらこうする」であるとか「僕はこう思う」なんていう社会的な感情を無理矢理にでも捨てさせようとするアナーキズムの最たるものだろう。
 であるから、映画としては全然楽しむ事が出来なかった。というよりも、これを映画であるとはあまり思いたくない。これはゲームであり、ゲームとして面白い。
 映画としては観られない、という理由としてもうひとつ。役者が全然知らない人ばかりだ、という点がある。役者の力強さが全くないので、どうしても素人アクションにしか見えない。アクションの演出も甘くて、立ち振るまいに武道の心得が感じられない。ここら辺の、アマチュア臭さがある種のゲームっぽさを産んでるような気がする。

 試みとしては面白いが、映画という凝り固まったカテゴリーで考えると、残念ながら及第点には及ばない。でも、『あずみ』がどう仕上がるかっていうのが、物凄く楽しみになった。役者の力も充分なんだから、今度は素晴らしきアクション映画になっていますように。