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『やくざと抗争 実録安藤組』 '72 東映東京

監督:佐藤純弥
脚本:石松愛弘
原作:安藤昇
出演:安藤昇・江守徹・安岡力也・佐藤蛾次郎・藤浩子・渡辺文雄・丹波哲郎


 安藤昇のセイガク愚連隊時代を、当時四十歳を越えていたであろう安藤先生自身が学ランを身に纏って演じた回顧的な作品。東映の岩飛沫の直後に展開される安藤先生と江守徹のガチンコ勝負(勿論二人とも学ラン姿)と、スタッフロールの後ろで鳴り響く安藤先生の素敵なお唄がとんでもなく衝撃的だ。ただ、江守徹の場違い感は否めないのだが…。

 安藤昇のイメージと言えば、どちらかというと「クールで粋な親分」である。決して、自ら戦争の場には出ないかも知れないが、大事な場面では究極の強さを発揮する、といった風情であろうか。静かに相手を打ち殺したり、一発だけガツンと殴るという事はあっても、集団の殴り込みには参加しない。なんというか、安藤先生のとてつもないカリスマ性が、そうさせてしまうのだ。安藤先生は集団の中のひとりであってはいけないのだ。
 しかし、この作品では、集団の中の安藤昇を観る事が出来る。勿論、愚連隊のリーダーではあるのだが、決してワンマンではなく、自ら戦いの場に足を踏み入れる。まるで、渡瀬恒彦の様に身軽に戦う安藤先生がとても新鮮だ。“元ヤクザの組長”という肩書きに胡座をかいて、ただ単に優遇されているだけではない、という事を痛感する。安藤昇はプロフェッショナルな映画俳優なのだ、と痛感するのだ。

 『実録安藤組』シリーズの中では、最もバイオレントなこの作品。安藤組結成前夜の安藤先生が最も血気盛りな時期を描いたものであるから、この様な仕上がりになったのであろう。とにかく、カチこむ。いたぶる。殺す。しかも、それがヤクザ同士の抗争ではなく、セイガクとヤクザの抗争だってんだから、驚きを隠せない。単なる不良学生がヤクザに戦争を吹っかけるなんて! この話がフィクションであるのならば、納得も出来ようが、実話であるのだから、何も言葉が出てきやしない。安藤昇という男は本当に物凄い。無条件に格好良い。

 安藤先生の独壇場、という訳ではなく、抗争劇を中心に描かれている作品であり、安藤先生のカリスマを期待していると、幾らか物足りなさを感じてしまうのだが、最後の最後、安藤先生はやってくれる。とんでもなく素敵な安藤先生の唄。そして、連合赤軍、或いは『県警対組織暴力』の松方の様に、要塞で戦う矢頭組(劇中の安藤組)。ナルシスティックな安藤先生を最高の形で満喫出来る。やはり、安藤先生はこうでなくっちゃ! 安藤先生は社会に一石を投じなくっちゃ!
 どんな言葉でも、安藤先生の口から発せられれば、大きな説得力を持ってしまう。これは真理である。否、安藤先生の言葉は全て真理である。信じるしかないのだ。
 この作品を観て、生温いセイガクを続けている事を恥ずかしく思った。セイガクだったら、セイガクらしく、ヤクザに楯突かなきなぁ! セイガクを舐めんなよ! なんて思ったところで、それをやってのけるのは安藤先生クラスの人間だけで、僕みたいな一般人には到底無理な話だ。黙って、安藤先生に憧れる事しか出来ない自分が情けない。