今日一日
 腹を立てないこと
今日一日
 うそをいわないこと
今日一日
 ものをそまつにしないこと
                       山頭火
 


 やっと春がきました。
 ファッションに興味のある方にとっては、重いコートを脱いで、どんな服装で外出しようかなどと、楽しみが多くなる季節ですね。
 一方、花粉症の方にとっては、辛い季節ですね。
 皆様いかがお過ごしでしょうか。
 今年は「平成」という時代の最後の年です。
 新しい元号も、もうすぐ発表になりますね。
 どういう時代になるのでしょうか。
 
 待っている時間はとても長く感じられますが、過ぎ去った時間はほんとうに短く感じられます。
 時の流れがゆっくりと進んでいたような時代から、文明開化といわれた近代、明治・大正・昭和・平成という、わずか150年足らずの時間の流れは、文明機器の進歩発達とともに、昔の人だったらまさに目の回るくらいに、その速さが加速されているようです。
 日本で初めて飛行機が飛んだのは、今から百十年ほど前の明治四十三年のことです。それが今では、地球からはるか離れた宇宙の空に、人間が長期滞在出来るようになったのです。当時、誰がこんなことを想像出来たでしょうか。
 夢の超特急と呼ばれ、ひかり号・こだま号とこれ以上のスピードはないという意味で名付けられた列車も、今ではいわゆる鈍行列車に格下げになってしまいました。
 新幹線が開業して、まだ五十五年ほどしかたっていないのに。
 次の元号の時代に開業予定のリニア新幹線では、沿道の景色はどう見えるのでしょうかね。
 田圃のあぜ道を自転車で走る、白いヘルメットの中学生は、まだ見えるのでしょうか。
 お寺の後ろを走る久留里線は、時代が停まったままになっているような記がしますけど。
 地域格差もスピードを増しているようです。
 
 地域格差の少ないのが、電話です。
 新幹線と同時期に、普及したのが「自動電話機」です。
 そう、あの黒電話と呼ばれる電話で、この時やっと、日本全国に電話がつながるようになったのです。
 それが今では、当時のスパイ映画でしか見られなかった無線電話、いわゆる携帯の時代となり、今ではスマホの時代になりました。
 初めて一人暮らしをする二十代以下の若者の固定電話加入率は、ついに0パーセントになったということです。
 
 まさに、文明の機器の進歩は目を見張るばかりですが、この進歩の裏には戦争というものがあったのですよね。
 戦に勝つために、文明機器を発達させてきたわけです。
 明治・大正・昭和と、日本は戦争に明け暮れました。
 そして平成の時代、確かに日本では戦争はありませんでした。
 でも、世界中が和やかで平らかな時代であったとは言えませんよね。

 春三月は、お彼岸の季節です。
 この平成最後の年、平成最後のお彼岸の時、一瞬立ち止まり、西の方角に真っ赤に沈む夕日を見つめてみませんか。
 お彼岸の時は、自分自身の過ぎ去った時間を、今一度振り返るときです。

 昔から「暑さ寒さも彼岸まで」といいますが、正岡子規の句には
「毎年よ 彼岸の入りに 寒いのは」ともあります。
 「彼岸」とは確かに仏教行事の一つには違いはないのですが、四季折々の変化のある日本では、彼岸は季節の変わり目ということで、生活に密着した言葉として独自の変化をとげてきました。
 春のお彼岸の中日は、春分の日という国民の祝日とされ、その意義は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日とされています。
 仏教でいう彼岸とは、正しくは「到彼岸(とうひがん)」といい、世の中を、大きな河をはさんだ両岸と考え、今の私たちが生活する、人間の心身の苦しみを生み出す精神の働きであるところの「煩悩(ぼんのう)」が渦巻く迷いの世界を、こちら側の岸(此岸)とし、その苦しみ悩みのない悟りの世界をあちら側の岸(彼岸)としました。
 この此岸から彼岸に渡るための修行方法を「到彼岸」と言ったのです。
 河を渡る方法には色々ありますね。
 自分一人で泳いで渡るか、橋を架けて渡るか、舟に乗って渡るかなど。
 この渡る方法は、宗派によってさまざまですが、浄土宗では、舟に乗ってナムアミダブツとお唱えして渡る方法を推奨しています。
 その方が楽ですよね。
 舟は阿弥陀さまが用意してくれていますから。
 でも、到彼岸のためには、一人一人が人間としての正しい生き方、生活を学び、実践していかなければならないのは当然の事です。
 その正しい人間の生き方としては、
 布施・・・ほどこしをする
 持戒・・・つつしむ
 忍辱・・・がまんする 
 精進・・・はげむ
 禅定・・・心をしずめる
 智慧・・・正しく判断する
の六つがあります。
 これをお彼岸の一週間の中日をはさんだ前後三日づつに行い、お中日には真東に沈む太陽の方角に極楽浄土を想い、天地自然のめぐみと、亡き方々の大きなご恩を感じ取って、愚かでいたらないこんな自分も極楽浄土に往生させて下さいと、お念仏をお唱えすることが、大事なのです。
 しかし、こんな簡単なことであっても、なかなか出来ないのが私たちです。
 だからせめて、山頭火さんの句のように、

 今日一日 腹を立てないこと
 今日一日 うそをいわないこと
 今日一日 ものをそまつにしないこと

こんなことを実践してみましょう。  
 
 人間が誕生するはるかはるか昔の時代から、地球を照らし続ける太陽の光の中で、一瞬立ち止まり振り返って見ましょう。
 次の元号の時代、本当にみんなが、明るく・正しく・仲良く暮らせる世界を考えてみたいものです。
 他人のことを先に見ないで、自分自身のことを先に見ることも大事ですよ。