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真菌性皮膚炎

CBCがまだもう少し残っていますが、今回は「真菌性皮膚炎」についてお話しさせて頂ければと思います。真菌性皮膚炎はカビなどによって引き起こされる感染症の一つですが、詳しく見ていく前に、まず皮膚炎にはどのようなものがあるのか見てみましょう。主な皮膚炎の種類として、次のようなものが挙げられます。
 
皮膚炎の種類
  ・細菌性皮膚炎
    −湿性皮膚炎
    −足底潰瘍
  ・真菌性皮膚炎
    −皮膚糸状菌症
  ・寄生性皮膚疾患
    −耳疥癬
    −ツメダニ
    −シラミ

皮膚炎には上記以外にもアレルギーやストレス、ホルモン分泌異常や内臓疾患等からくるものもあり、私たち飼い主だけで判断するのはとても危険です。また、皮膚炎だとばかり思っていたら、皮下膿瘍だったというようなこともあります。毛艶の変化や皮膚の異常が見られたら、必ず病院で診て頂くようにして頂ければと思います。

では、「真菌性皮膚炎」について詳しく見てみましょう。真菌症とは次のように定義されます。
 

真菌症の定義
カビや酵母による感染症。真菌とは真核を持った細胞のことで、植物性の細胞膜(主成分はエルゴステロール)を持っていることが特徴。細胞膜を持たない原核細胞(細菌など)による感染症に比べて、頑固で治りにくい。

主な真菌に「カンジダ菌」や「白癬菌(水虫の菌)」などがあります。これらは大半の人・動物がもともと保菌しているものですが、通常は体内の免疫力によって過剰な増殖が抑えられています。ところが、病気やステロイド・抗生物質の多用など、何らかの理由により免疫力が低下してくると発生します。皮膚のほか口内、食道・腸、肺などの内臓にも感染し、生命に危険を及ぼすこともあります。
 

真菌性皮膚炎の種類
  ・表在性真菌症(水虫等、感染が皮膚表面に限定)
    −白癬、皮膚カンジダ、癜風、皮膚アスペルギルス症(表在性)、爪真菌症、黒癬
  ・深在性真菌症
    −腸や、肺、腎臓、膀胱、血液、脳などの内臓が感染

治療は抗真菌剤の投与になります。開発が進み、最近はいろいろなものが出回るようになりましたが、菌の持つ性質によって使い分けられているようです。
 

抗真菌剤について
  ・アゾール系抗真菌薬(さらにイミダゾール系とトリアゾール系に分かれる)
真菌の特徴である「植物性の細胞膜」の主成分、エルゴステロールの合成を阻害。副作用も少なく一般に広く使われている。外用薬ではあまり問題にならないが、内服薬の場合は消化器系に対して食欲不振・悪心・嘔吐があるほか、肝臓に対しても検査値異常やまれに黄疸をもたらす等の副作用がある。

  ・ポリエン系抗生物質
真菌の細胞膜のエルゴステロール部分と疎水結合を起こすことによって、エルゴステロールとリン脂質との正常な相互作用を阻害。また、ポリエン部分が真菌細胞膜に孔をあけてイオンを通過させ、不可逆的な障害を起こさせる。真菌類全般に対して効くが、投与方法が限られ、副作用も大きい。

  ・グリセオフルビン
真菌の中でも白癬菌を含む皮膚糸状菌に効く。白癬菌の一つ、「水虫」に使われることが多い。真菌の有糸分裂を阻害し、真菌の増殖を抑える作用がある。また、白癬菌の餌であるケラチンという蛋白質と結合して、白癬菌の働きを阻害する。頭痛、眠気等の副作用あり。

  ・フルシトシン
シトシン・パーミアーゼという酵素の働きで真菌細胞内に移入し、細胞分裂を抑制する効果を発揮。内服でも消化管吸収が良いため、全身性の真菌症にも用いることが出来るほか、真菌性の髄膜炎にも効果的。ただしカンジダなど一部の菌に限られる。耐性ができやすいのが欠点。副作用としては、骨髄機能抑制から、まれに白血球減少、血小板減少をきたすことがある。

抗真菌剤の内服剤を長期服用する場合は、肝臓の副作用に注意が必要です。また、アゾール系の抗真菌薬は、他の薬と相互作用を起こす恐れがり、飲み合わせにも十分注意します。

外用剤の塗布期間については、炎症が治まってから、念の為にさらに1週間くらい外用を続けてから中止します。真菌が検出される場合にはさらに1週間続け、再度、真菌検査を行います。以後1週間ごとに真菌検査を繰り返して、治療の有無を判断します。

ちなみにマロンが真菌性皮膚炎と診断された時は、アゾール系抗真菌薬である「ニゾラール」クリーム(軟膏)を処方して頂きました。これはヤンセン協和から出されている比較的新しい薬のようですが、当時はステロイドを併用していたので1日1回では効きが悪く、その後、獣医さんの指示により1日2回に変えたところよく効くようになりました。4週間程度で完治しました(当時の様子については、こちらをご覧下さい)。

かかりつけの獣医さんからは「舐めても大丈夫」とお伺いしましたが、薬の効果を最大限にするためには、できるだけ刺激して舐めないよう塗り込みます。なかなか難しいところですが、撫でるついでに薬も塗るというような感じで、自然に塗り込んで頂ければうまく行くと思います。熟睡している時にこっそり塗るのもよい方法だと思います。


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