snail5.gif (1130 バイト)  貝貨(ばいか)となった貝

  私たちが使用しているお金や、着飾ったり蓄えたりする財宝。これらに関係する漢字には、「貝」の字を含んでいるものが多くあります。例えば、賃、貸、買、貿、貴、財、貯、販、賄など。旧字も含めると、かなりの数になります。このように貝の字が、金銭・財宝に関係する漢字に多く含まれているのは、古代の中国において貝が貨幣の役目を果たしたことに由来します。

  この貝の字、成り立ちは貝の象形であるとされています。具体的にはいくつかの説があるようですが、「タカラガイ(宝貝)という貝の殻の形」からできたとされています。

  古代中国(今から約3500年前)で使用された宝貝は、その大部分が「キイロダカラ」という種類です。キイロダカラは、学名をMonetaria moneta moneta  といい、ラテン語のmoneta は「貨幣」の意味があり、属名も種名も「貨幣」を意味しています。中国名は「銭幣宝螺」で「貨幣の宝貝」、英語でも Money Cowrie 「お金の宝貝」と呼ばれ、国際的に「貨幣として使われた貝」にふさわしい名前となっています。

  ところで、「貝貨」は「かいか」ではなくて、「ばいか」と読みます。これは「貝」の音読みが「ばい」であり、「かいか」とすると湯桶読みになるからです。

貝貨の王者キイロダカラ(タカラガイ科)

アンボンクロザメ(イモガイ科)

 
  宝貝が貨幣に使用された理由ですが、それは次に挙げられるような、貨幣としての条件を満たしていたからです。
  @そのもの自体に使用価値があること。
  Aだれもが一見してそのものと認識できること。
  B大きさ・重さが手ごろで、携帯・運搬が不便でないこと。
  C集積・分割によって随意の価値を構成できること。
  D長く変質させることなく保存でき、価値が減らないこと。
  E自由にいくらでも手に入れることのできるものではないが、流通するのに必要なだけの数量    が存在すること。

  貝貨は古代中国だけでなく、12〜13世紀ころにも用いられていました。また、インド・フィリピンなど東南アジア、さらにはアフリカでも用いられ、ニューギニアの奥地では最近まで使用されていたようです。

  また、貝貨にはキイロダカラ以外にも、ハナビラダカラ、クロチョウガイ、フタホシカニノテムシロ、アンボンクロザメなど何種類かの貝が使用されていました。

  貝貨については、岡本正豊さん(千葉県)から多くの資料や助言をいただきました。また、下記の文献を参考にさせていただきました。なお、貝貨を含む貨幣の歴史については、東京の貨幣博物館のホームページ(http://www.imes.boj.or.jp/)が参考になります。
     「ものと人間の文化史83 貝U」、白井祥平(1997)、法政大学出版局
     「貝の文字と貝貨」、岡本正豊(1996−97)、東京貝類同好会
     「文化人類学事典」(1987)、弘文堂
     「パプアニューギニアの貝貨」(世界画報)、(1975・2)
ミクロネシア・ソンソロル島のアンボンクロザメ(イモガイ科)の殻頂部のみを円盤状に磨いた貨幣 ニューヘブリディス諸島の島々では、大形の貝殻を輪状にくり抜いたものが財力を表現するとともに貨幣としても流通