snail5.gif (1130 バイト)  たつむり四方山話4

  国天然記念物・西浦のエヒメアヤメ(愛媛菖蒲)


  山口県防府市西浦に「エヒメアヤメ」という草丈15cm〜25cmほどの、小さなアヤメ
 が自生しています。県内には、ほかに豊浦町にも自生地があります。この西浦のエヒメ
 アヤメは、自生南限地として国の天然記念物に指定(大正14年(1925)10月)されてい
 ます。たびたび話には聞き、開花の時期にはニュースとして見聞きしてきました。是非、
 一度、現地を訪れ、エヒメアヤメという植物を見てみたいと思っていました。今回、県自
 然観察指導員協議会第3支部が、市教育委員会および西浦えひめあやめ保存会の協
 力を得て、結実状況の調査活動を行いました。この活動に参加することにより、私とし
 ては初めて、朝鮮半島や中国大陸に自生するというアヤメを見ることができました。

  最初に、保存会の若林会長さんから、天然記念物の指定を受けてからの自生地の状
 況の説明を受け、その後、副会長の丸山一生さんから、エヒメアヤメの特徴や保存活
 動の内容についてお話を聞きました。人とのかかわりの中で維持されてきた草原だか
 らこそ、エヒメアヤメが細々と自生を続けることができたことを知りました。開花時期は
 4月。今回の活動を通して、私自身は、正真正銘のアヤメそのものを示す平行脈の細
 長い葉を間の辺りにしました。そして、その葉の株元に数個のかわいらしい種子の入
 った実を観察することができました。

  丸山さんのお話では、種子がはじけ出る頃、アリが種子を巣穴に運ぶ。そのことによ
 って種子が分散する。アリとエヒメアヤメのおもしろい関係があるようです。植物の花粉
 を拡散する方法に、風の力による風媒、昆虫などの虫の力による虫媒というのがあり
 ます。おもしろいものに、かたつむりが咲いた花の上をはうことによって受粉が行われ
 る「かたつむり媒」というのがあります。私は、実際には観察していませんが。

   ところで、エヒメアヤメは「愛媛菖蒲」と書き、和名は明治30(1897)年に愛媛県で最
 初に発見されたことで、この名前があるそうです。分布は岡山県から宮崎県までの西
 日本。中国大陸を分布の中心とするこの花は、氷河期に日本列島が朝鮮半島と陸続
 きであったことを植物分野から示す貴重な証拠となるものだそうです。

  自生地に設置された説明板には、次のように記載されています。
  「エヒメアヤメは、朝鮮半島、中国北部に自生し、本州、四国、九州の一部にも分布し
 ている、きわめて小さなアヤメ科多年生の草本である。別名タレユエソウともいい、春、
 桜の散る頃から4月末頃までに、可憐な藍紫色の美しい花を咲かせる。根茎はやせて
 短く、やや叢生し、赤褐色の繊維鞘状葉に包まれている。葉が、狭線形で先端はとが
 り緑色であるが、基脚部は赤みを帯びている。このアヤメは、かつてわが国が大陸と
 陸続きであったことを植物学的に証明する貴重な植物である。(昭和56年12月、山口
 県教育委員会、防府市教育委員会)」

  ※タレユエソウ:誰故にこんな可憐な花を開くのかと賛美した古名
  ※開花したエヒメアヤメの写真は、丸山一生さんのご好意で提供を受けたものです。