エッセイ 14

 八坂川河口干潟の潮干狩り
 
 
  初夏、ゴールデンウイークの真っ直中。天気は五月晴れ。大分県国東半島を車で走っていた
 私は、わが目を疑うほどの光景に出会したのでした。それは、別府湾(守江湾)に流れ注ぐ八坂
 川河口に広がる干潟で、色とりどりの軽装姿の潮干狩りを楽しむ人たちの゛群れ゛でした。数百、
 いや千人は集まっていたかもしれません。川の畔には、干潟を見下ろすように城下町・杵築市の
 シンボル、杵築城が気品ある姿を見せていました。私は思わず、杵築大橋の上で車を止め、圧
 巻のその光景を眺めたのでした。

   カラフルなその潮干狩りの様子は、この上もなく美しく映り、ハマグリやアサリであろう海産貝
 類を育む、内海の豊かな干潟に感動すらしたのでした。余りの感動のために、その光景をフィル
 ムにおさめることができず、残念に感じていました。幸い、古くからの知人が近くに住んでいて、
 その方に依頼し、潮干狩りの様子を撮影してもらいました。ただ、ゴールデンウイーク後であり、
 ややさみしい光景ではありました。わが目を疑ったあの感動の潮干狩りは、来年まで待たなけれ
 ばならないのでしょう。

  ところで、、全国各地の貝塚から貝殻が出土していることからしても、貝はかなり古くから食用
 になっていたと想像できます。シジミとならんでアサリ、ハマグリも水辺の味覚を代表する貝です。
 どんなに機械化が進み、社会が進歩しても、自然の一員である私たちは、自然との関わりをなく
 することはできないと思います。食料としてだけでなく、いろいろな形で自然と接していくことでしょ
 う。豊かな干潟をいつまでも……。

               もの思う 乙女汐干に 加はらず  森田 峠

  ※八坂川河口の潮干狩りのスナップは、安田文弘さん(杵築市)の撮影によるものです。また、
   杵築城(再建)の写真は、大分市視聴覚センターより提供を受けました。ご協力ありがとうご
   ざいました。
 
河口干潟の潮干狩り(背後に杵築城) 春先から初夏が筍のアサリ 木付氏が築いた杵築城(1250年)