エッセイ 16

  健在なり、孤島に生きるかたつむり
  
  山口県萩市の沖合約45kmの日本海に、見島(みしま)という島があります。この島は、生
 体の採集によって巻き貝であることが初めて確認された「ユリヤガイ」と、英国人アダムス
 (A.Adams)によって採集された貝類群地点として、貝類界では知らない人がいないほど有名
 です。島の東端に、島でわずかに原生林が残る日崎(ひさき)という岬があります。この林に日
 本でここにしか確認されていない小さなかたつむり(陸貝)がいるのです。ミシマヒメベッコウガ
 イとタダムシオイガイです。

  今から5、6年前に訪れた時は、生きた個体を確認することができませんでした。先般、
 (2000年7月)久しぶりに訪れ、生息環境や生息状況を調査する機会がありました。林内
 の乾燥の進行と土砂の流失を懸念していましたが、予想に反して2種類のかたつむりは、と
 もに生き貝が確認され、環境も以前より改善されていました。年に数回、「波切不動様」をお
 祭りするお堂(日崎にはお堂がある)へ参拝する人が訪れる程度で、自然の力によって破壊
 されさえしなければ、今後とも見島特産のかたつむりは、生き続けることを感じさせてくれまし
 た。

  片道1時間10分と、かつての半分の所要時間で本土(萩市浜崎港)から渡ることができる
 ようになり、島がずっと近くなりました。しかし、本村(ほんむら)に巨大な多目的ダムが建設中
 だったり、「ユリヤガイ」の打ち寄せる砂見田(さみだ)の浜も姿を変え、今や護岸されたフェニ
 ックス広場となっていました。かわりつつある島の様子も気にはなるのですが……。

   秋ふかき海をへたてゝゆりやかひの 
       すめる見島をはるか見さくる
                
(昭和天皇 御製)
 林床の生息調査
 萩市沖に位置する見島と六島  確認された陸貝
「おにようず」船上より 右端:日崎 日崎より宇津方面を望む