エッセイ 18

かたつむりと陸生ホタル


  台風の襲来に遭い、あわや足留めになるかというピンチになりながらも、有意義な南の島の調査旅
 行を経験しました。8月下旬、知人とともに沖縄・西表島を訪れました。沖縄本島に次いで2番目に大き
 い島。この島は面積の9割以上がジャングルに覆われ、島のシンボルであるイリオモテヤマネコやカン
 ムリワシ、セマルハコガメなどの貴重な生き物が生息しています。

  島に着いた夜、ちょっと散歩をしようと民宿のぐるりを歩きました。真っ暗な道(こういうのを真っ暗と
 いうのかと実感)を歩きながら、本土では目にしたことのない満天の星空を見上げました。銀河の星も
 薄い雲のように見えるのでした。あまりの美しさに、翌日の夜も出掛けました。

  その時周囲の草むらで、ちかちかとホタルのような明かりが、ここあそこで見えたのです。おそるお
 そる懐中電灯で照らしました。すると、これまで見たことがない大きなホタルの幼虫のようなものがいる
 ではありませんか。気がつくと、いることいること。たくさんいました。これも、本土とは比較にならないほ
 ど、幼虫の餌となるかたつむり「ウスカワマイマイ」が生息するからだと、合点しました。足の踏み場もな
 いほど多くのウスカワマイマイが、島内の各地で見かけられました。本土にもウスカワマイマイは人家
 周辺にいますが、西表の約3分の1程度で、はるかに少ないという印象です。

  草むらで見たホタルの幼虫は、八重山諸島の人家付近に生息する「オオシママドボタル(Pyrocoelia
  artipennis)」でした。10月中旬から、夜になると雄の成虫が光りながら飛び始めます。1月ごろまで見
 られ、「冬のホタル」です。雌は翅が退化し、巨大な腹部をしているために飛ぶことができず、羽化した
 後も落葉下で過ごします。雄との出会いのきっかけは、光によらず臭い(性フェロモン)を使っているよ
 うです。西表を訪れ、初めて陸生のホタルを見ることができました。

  ※ オオシママドボタルに関して、石垣島在住の高田香代子さんより助言をいただきました。また、
    『沖縄のホタル』(深石隆司著、1997,沖縄出版)を参考にしました。
  

台湾に近い亜熱帯の島・西表島

河口に発達したマングローブ(前良川河口)

オオシママドボタルの幼虫(古見)

花株に群がるウスカワマイマイ(赤丸印)