エッセイ22 

  クリオネとタッチングプールの水族館

 

   今年の夏、遠出は無理と、山口県内の海水浴場で一泊二日を過ごしました。場所は県東部の大
  島郡、正確には屋代島。少しだけ奮発をして、宿は海を見下ろす大浴場と、プールがあるホテルに
  しました。翌日は真夏の太陽が照りつけるビーチで海水浴。日頃、スイミングスクールや学校のプー
 ルに慣れきった子どもたちは、思った以上に塩辛い海の水を口にしながら、泳ぎを楽しみました。

   次に訪れたのが、島の東端に位置する東和町。ここにある「なぎさ水族館」です。ここはかねてよ
  り聞いていた、「流氷の妖精」、「流氷の天使」と呼ばれる「クリオネ(Clione Limacina)」が飼育されて
   いる小さな水族館です。2階生態展示室には、北海道紋別市から贈られた一塊りの流氷と元気に泳
  ぐ妖精の姿がありました。

   子どもたちが喜んだのは、神秘的な美しさをもつクリオネだけでなく、1階に広くとったタッチング
  プールでした。サンダルを脱いで、ヒトデ、ナマコ、イシダイメジナなどが所狭しと泳ぎまわるプールの
  中に入り、直接に海の生き物に触れることができるのです。お世話をされている佐々木克明さんの
  話では、「海で遊ばなくなった今の子どもたちにとって、まず生き物と触れ合うことが大切。それだけ
  に身近に海を体験できる施設を目指している」とのこと。訪れたときにも、佐々木さんは町の漁師さ
  んから刺し網にかかった雑魚やカニ、ウミウシなどを譲り受け、プールに放流されていました。

   なぎさ水族館は、町が出資する第三セクターが経営し、90年4月にオープンしました。鉄筋2階建
  て、延べ床面積約200平方メートル。生き物は約200種見られます。特別に珍しい種類というわけ
  ではないのですが、どれをとっても粋のよい瀬戸内海の魚たちが泳いでいます。

   また、うれしいのが壁に掛かった説明板や水槽の解説ラベルが、手書きというところです。あたた
  かさを感じさせます。大規模水族館にはない、ハンドメイドの小さな水族館です。是非、訪れてみられ
  ることをお勧めします。

ハンドメイドのなぎさ水族館

今とりたての海の生き物をプールに放流

足元にも寄ってくる魚たち

水質や水温には細心の注意

  ハダカカメガイ

  Clione Limacina

     2〜3センチメートル

 流氷の下にのみ生息
 する。貝殻をもたない
 貝の一種。

※ クリオネの写真は、なぎさ水族館で市販されている、絵葉書から取り込みました。使用させていただき感謝いたします。