snail5.gif (1130 バイト)  かたつむりの名を冠した虫?

 「どうしてこんな形になったのだろう?」「ぐうぜん、形がにてしまったのだろうか?」と、思わず問いかけてみたくなるような、そんなおもしろい生き物?を紹介します。まだ、ほかにもあるかもしれません。
 
カタツムリトビケラ
 
 私たちの身の回りには、不思議な形や色をした生き物が見られます。ある日、私は清流の小石の裏や落ち葉の裏に生息する、淡水性の小さな巻き貝「アキヨシホラアナミジンニナ」の分布調査をしていました。目を皿のようにして、石の裏を慎重に観察していました。すると、アキヨシホラアナミジンニナとは全く形の異なる生き物を、水苔の上に発見。よく見るとかたつむりの形です。ルーペを取り出してよく見ると、殻の表面に石英質の微塵をたくさんつけているのです。それは、木々の梢から漏れる陽の光を反射して、きらきらと輝いていました。まるで、宝石で自らを着飾っているようにも見受けられました。海にすむ貝の仲間に、これと同じように海底の砂や異物を殻につけ、カモフラージュするものがいます。クマサカガイの仲間です。

 もしかして、淡水性貝の新種発見になるかと思い、胸をわくわくさせました。手当たり次第に図鑑で調べてもはっきりせず、とうとう専門の先生にお願いすることにし、標本を送りました。すると、残念ながら新種ならず。幼虫の時代を水底で生活する「トビケラ」の仲間の筒巣だったのです。成虫になると、蛾のような昆虫になるのです。もっとわかりやすく言うと、トンボやカゲロウと同じように、成虫になる前は水中で生活しているのです。

 それにしても、たいへんかたつむりに似ています。専門の先生のお話では、かたつむりと間違えて採集した人は、私一人ではなかったようです。さらに、名前を聞いてもっと驚きました。和名を「カタツムリトビケラ」、学名を「テリドムス・ブラシリエンシス」と言うのです。
 
 
141tobik.jpg (5548 バイト)  山口県内でも阿武郡の阿東町・川上村、美祢郡美東町などで、渓流の小石の裏などを調べると容易に見つけることができます。殻径2〜3mmと小さく、殻表に多くの砂の微小片が付着しています。ルーペで殻頂部を見ると、小さな穴が一つあいています。
  
 参考までに、岩国市の錦帯橋を流れる錦川には、父親思いの娘の化身を伝説にもつ、巣が人形の形をした「ニンギョウトビケラ」という仲間がすんでいます。

コウモリのカタツムリ(蝸牛)管
 
 昔、中学校の理科の授業で、耳のつくりを学習しました。その時、形がかたつむりによく似た器官があったのを覚えています。実によく似ていました。「カタツムリ管」またはそのままズバリ「蝸牛」と呼ばれているものです。機械的な音の信号を、聴神経を流れる電気的な刺激に変換する大切な役目をします。このような大切な器官が、どうしてかたつむりの形になったのか、そのメカニズムは私にはわかりません。

 ところが、このカタツムリ管がかたつむりに似ていることによって、貝類界に大きな誤りが報告されようとしていたのです。

 現在、日本貝類学会の名誉会長の波部忠重博士が、京都大学の学生だったころ、京都府内にある質志(しずし)鍾乳洞内の動物調査をされたことがありました。その際、洞内で泥に埋もれた約1cmくらいの褐色をした、左巻きの貝類を発見しました。帰宅して調べたところ現生の巻き貝に似ており、もし、生きた貝が見つかった時のことを思って、一応「スズシトロクス・シニストラリス」と学名をつけて発表のできる準備をしました。

 ところが、それから長い間、同じ貝は発見できませんでした。そのうちに貝類研究者黒田徳米博士のもとに、山口県美祢郡秋芳洞内で採集されたかたつむりに似た貝が届けられたのです。これは、当時県立大嶺高校の岡藤五郎先生が、採集したものでした。よく見ると、左巻きと右巻きの両方が一緒に採集されているのです。同種で両方の巻き方をすることは、ほとんどありません。検討をすると、貝と言い切れない点もあるのですが、何だか耳のカタツムリ管に似ています。そこで、黒田博士は解剖学の専門の方に尋ねたところ、コウモリのカタツムリ管であることが判明したのです。
 
142jikan.jpg (18937 バイト)  これで、長い間、課題になっていた貝の研究はあっけなく幕となり、波部博士も誤りを発表することもなく、恥をかかずにすんだというエピソードがあるのです。

 ところが、ドイツの貝研究者がこのコウモリのカタツムリ管を採集し、オオヘビガイ類の幼貝として雑誌に報告してしまったのです。この時、経験のあった黒田博士は、その学者に連絡をとり、翌年にはその訂正論文が出されたということです。

 今も、美祢市歴史民俗資料館には、岡藤先生が採集された「キクガシラコウモリ」のカタツムリ管が展示されています。
 ※コウモリのカタツムリ管についての資料は、波部忠重博士より提供を受けました。また、キクガシラコウモリのカタツムリ管の写真は、美祢市歴史民俗資料館の好意により岡藤コレクションの中から撮影したものです。

                                                      home1.gif (3055 バイト)