snail5.gif (1130 バイト) まじないに利用されたかたつむり

 かたつむりをはじめとして貝類は、意外に呪いに利用されたり、その殻のもつ不思議な光沢から魔物払いにされたり、海から遠い高山地帯では敬虔な神の聖水入れにされたりざまざまな利用がされてきています。わが国にも「子どもの夜泣き治し」(熊本県を中心に九州地方、浜田善利の「熊本県のキセルガイ伝説」(九州の貝第1巻))や「安産の呪い」(筑前糟屋郡、小野蘭山の「本草綱目啓蒙」、杉本つとむ編著による復刻本(1974年、早稲田大学出版))などがみられます。 ここに紹介するものは、山口県において伝わってきたものです。
 

     ◆弾丸よけ、「お守り」に持参したキセルガイ・シイボルトコギセルガイ

 昔、たばこを吸うときに使った煙管に形が似ていることから、キセルガイと呼ばれているかたつむりがいます。このシイボルトコギセルガイは、九州・山口・四国西南部を中心に西南日本に点々と分布する樹上性の巻き貝です。殻色は黒褐色、殻径約4.5mm、殻高約17mmです。江戸末期、長崎へ来たドイツ人医学者シーボルトが発見。オランダの博物館に送り、初めて学会に報告されました。このかたつむりは生命力が強く、わずかな水分でも生きながらえ、乾燥状態でも堅く弁を閉ざし、半年から1年くらいビクともしません。クスノキ、イチョウ、モミジなどの大木の樹皮に入り込むようにして生きています。

 「山口県産貝類目録」(河本・田辺編、県立山口博物館、1956)」の中に、この貝について次のような記述があります。
 − このキセルガイは、生命力が強く数ヶ月から1年余りも食物や水分を摂取しなくても、生命を保っているので、旅立つに際し、身体健全長寿の守護として、お宮の神木クスノキに生息するこの貝を拝受して、肌身に付けて出発し、帰郷の際にはお礼に参拝して、再び元の場所に放ち返す風習になっていた −
 また、旧藩時代、参勤交代の時には、旧藩士たちが盛んにこれを持って行ったり、日清・日露の戦役では出征軍人が多数、これを授かって行ったとも言います。私は、県内神社叢を調査したとき、いくつかの神社で「旅行・航海の安全、無事帰還の守護にされた」などの風習のあったことを聞きました。こうしたことは、戦場での弾丸除けの呪いにされたということで、「神宮皇后が朝鮮(新羅)に攻め込まれた時、蜷がその船にはりついて、敵の矢から船を守った」という伝説(下関市一の宮住吉神社、佐藤 治著「馬関太平記」による)にもとづいています。
 現在、祭礼は行われていませんが、下関市一の宮住吉神社には、身体健全・旅行安全のお守りがあります。もちろん社叢にはシイボルトコギセルが生息していますが、かつてより生息数が減少し、生息環境がしだいに悪くなっているとのことです(宮司さんの話)。ちなみにお守りは、レプリカで、1個500円です。きっと御利益があると思います。
 
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幹に生息するシイボルトコギセル 下関市一の宮住吉神社の蜷お守り シイボルトコギセルマンの熱演(萩市相島)
※ シイボルトコギセルマンの写真は、第19回親と子の史跡探訪−萩市相島(1999・6・13)−(萩文化財保護協会主催)のものです。島内に生息するシイボルトコギセルに扮して、萩青年会議所のメンバーによって小演劇が演じられたものです。

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