SRSで落下試験(フリーフォール)と衝撃試験機を使った落下試験の等価性を考える

梱包品を落下試験を行う際、その繰り返し再現性が問題となります。これは落下の開始姿勢のコントロールの難しさとともに空気抵抗などの影響も考えられます。試験品の落下姿勢の再現性を確保するためには、試験物を落下開始時から落下後に至るまで同じ姿勢を保持する必要があります。この落下姿勢のくり返し再現性を良くするためには衝撃試験装置を使う必要性があります。しかしここで問題となるのは衝撃試験機を使った落下試験の場合、その機構から自然落下ではありえない外力(衝撃テーブルの摩擦や空気抵抗など)が混入してきます。ここでは、自由落下と衝撃試験機による落下の等価性をSRS理論を使って説明します。論旨を明確にするために、試験品の落下時の空気抵抗は無視します。

右のアニメーションは、両パッケージ品が同じ応答を示す(同じ衝撃を被っている)状況を表しています。このアニメーションから落下高さが異なっていることが分かります。今、右側のパッケージが1mの高さから自然落下し、正確に面で床面に衝突しているとします。これと同じダメージを衝撃試験機を使って与えようとする場合、衝撃試験機のテーブルをどの程度の高さから落下させればよいのでしょうか。パッケージは1mの高さから自然落下しています。製品の質量をmとし緩衝材をバネkとすると、このパッケージ品は、右の図のようにモデル化できます。いま、この製品に加速度センサーを取り付けて衝撃を計測したとき、ピーク加速度100Gの正弦半波が記録されたとします。1m落下の場合、このパッケージの床面への衝突速度V1は、

となります。減衰が無いすると、反発速度V2の大きさもV1に等しくなるため、この落下衝突によって製品が被るトータル速度変化ΔVは885.4[cm/sec]になります。正弦半波の速度変化は加速度A[cm/sec2]とパルスの作用時間D[sec」を使って次式で計算できます。

この式から作用時間Dを計算すると、

つまり、計測されたピーク加速度が100Gであった場合、作用時間は14.2msecということになります。この計測パルスからこのパッケージ品の固有振動数 f を計算すると、次のようになります。

衝撃試験テーブルに取り付けられたパッケージ内部の製品(質量m)に、100G-14.2msecの衝撃パルスが加わるようにするためには、衝撃試験機のテーブル面でどのような衝撃パルスを発生させなければならないのでしょうか。

衝撃試験機のテーブルは、落下して下側にあるプラスチックプログラマの上に落下します。一般にプラスチックプログラマの上面にはフェルトなどが敷かれています。このフェルトの厚みにより、テーブル衝突時の衝撃パルスの作用時間がコントロールされます。今ここでは、2msecのパルス作用時間を発生させることのできるフェルトを使用します。この状況は、質量Mの衝撃テーブルとバネKのプログラマの間に減衰Cのフェルトが存在していると考えることができます。プラスチックプログラマが理想的なバネ(減衰が無い)であれば、衝撃テーブルは落下した後、再び落下開始高さまでリバウンドします。この場合、反発係数は1ということになります。落下高さ(衝撃テーブルの底面とプラスチックプログラマの上面の距離)を決めるとテーブルの衝突速度が計算できます。このプラスチックプログラマの上面に薄いフェルトを敷くとテーブルの衝突速度は設定された落下高さで決まりますが、リバウンドはフェルトの特性に支配されます。このようにテーブルの衝突エネルギーは、フェルトという減衰要素により吸収され、吸収されなかった衝突エネルギー量がリバウンドを決定づけることになります(注:音や熱によるエネルギーの減少は無視しています)。フェルトを乗せたプラスチックプログラマ上に衝撃テーブルを高さHから落下させ、そのリバウンドの高さがHであれば、反発係数は次の式から計算されます。

ここで、VT1:衝撃テーブルの衝突速度、VT2:衝撃テーブルの反発(リバウンド)速度

ここでは、フェルト/プラスチックプログラマと衝撃テーブルの反発係数をe=0.5として話を進めます。

等価落下試験を考える場合、重要なことは自然落下時であれ、衝撃テーブルに取り付けられた状態での落下であれ、その中の製品が同じ衝撃パルスを受けることが重要なのです。つまり、どちらの衝撃に対しても同じ応答を示すようにしなければなりません。ここで少し視点を変えて、パッケージが底面から受ける衝撃について考えてみます。

上の図でA1は衝撃試験機のテーブルが受ける衝撃です。A2は自然落下時に床面から受ける衝撃です。A1は、フェルト/プラスチックプログラマへの衝突で発生する衝撃ということになります。では、自然落下時にパッケージの底面が受ける衝撃はどのように考えればよいのでしょうか。

パッケージは落下高さ(ここでは1m落下)で決まる衝突速度V1(=442.7cm/sec)で床面に衝突し、この速度がゼロになるまで減速します。この間の速度変化は衝突速度と同じV1ということになります。そして、この速度変化がパッケージ内の製品/クッションに100G-14.2msecの応答パルスを発生させています。次にパッケージの底面からどのような衝撃パルスが加えられたときに100G-14.2msecの応答を示すかを考えてみます。下に次の3タイプの衝撃パルスが描かれています。

          (a) 354.7G-2msec正弦半波パルス

          (b)100G-4.5msecの矩形波パルス

          (c)50G-2msecの矩形波パルス

これらいずれの衝撃パルスが印可された場合でも、35.2Hzの製品/パッケージ(質量/ばね系)は同じ100G-14.2msecの応答を示します。上の右側の図はそれぞれの印可衝撃パルスのSRSプロットです。いずれのパルスに対しても35.2Hzの固有振動数を持つバネ/質量系がが100Gで応答していることが示されています。ここで注意しなければならないことは、(a)と(b)のパルスは速度変化(パルスの面積)が442.7cm/secですが、(c)のパルスは速度変化が695.8cm/secであるということです。つまり、先ほど述べたパッケージの自然落下による落下衝撃では(c)のパルスは発生しません。これは落下衝突による速度変化と異なる速度変化であるためです。

つまり、衝撃試験機のテーブルに1mの自然落下時の衝突速度と同じ速度変化(442.7cm/sec)を与えてよればよいことになります。

衝撃テーブルで2msecのパルスを発生させることができれば、354.7Gのピーク加速度の正弦半波であれば、442.7cm/secの速度変化を発生させることができます。反発係数が0.5であると仮定すると、プログラマに対しテーブルを295cm/secの衝突速度で衝突させてやればテーブルのリバウンド速度が147.7cm/secとなり、トータル速度変化が442.7cm/secになる訳です。圧縮空気を利用した衝撃試験装置などでは、この速度変化を衝撃テーブル上に発生させればいいことになります。

落下式衝撃試験機のテーブルを295cm/secの衝突速度でプログラマに衝突させるためには、

すなわち、テーブルを44.4cmから落下させることで、1mの自然落下と同じ衝撃をパッケージ内部の製品に加えることができることになります。

次回に向けて.....
次のようなテーマを考えています。

  • 衝撃テーブル上に2msecのパルスを発生させるとして話を進めていますが、5msecではだめなのか(答え:だめです)。
  • 1msecではどうか(答え:OKです)。
  • ガラス製品などを直接テーブルに取り付けた場合、上述の試験で等価落下試験が行えるか。(2msecのフェルトではだめです)。


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