滲出性中耳炎の治療経験−ジアテルミーとヒスタグロビン注射

                 勝田耳鼻科 志井田 守

はじめに

 滲出性中耳炎の治療には鼓膜チューブ挿入が適応されているが、私はジアテルミーによる治療を行って好成績を得ている。しかし鼓膜切開や穿刺の外科的処置を要する所見が再燃して、寛解するが年余にわたり治癒しない難治例があり、このような例は学齢期まえの幼児に目立つようである。ヒスタグロビン注射は1バイアル中に人血清ガンマグロブリン12mgとヒスタミン二塩酸塩0.15mgを含有する非特異的減感作を目的とする抗アレルギー製剤で、私は難治例にヒスタグロビン注射を適用してみた。以下その経験について報告する。

 

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 滲出性中耳炎も例外ではなくWaldayer氏扁桃輪の機能改善が好影響をもたらす。局所的にまた内服として全身的な薬剤治療が主として行われるが、発育途上の幼少児のWaldayer氏扁桃輪はデリケートで目覚しい効果は期待しにくい。

 

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図左のマイクロ波(2450MHz)は耳鼻科用アンテナを用いてradiate(照射)する。図右の超短波(30MHz)は一対のパッド導子で両耳を挟んでirradiate(透射)する。超短波とマイクロ波はジアテルミーの主体をなすが、物理療法は保険診療では優遇されておらず、基礎教育でも漏れたり忘れられたりしている。

 

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 マイクロ波の加熱作用は深部まで届かないが鼓室の滲出液の吸収促進に役立つ。超短波は深部透過性でWaldayer氏扁桃輪の治療に著効がある。図はアデノイドの治療で耳管通気度の改善は下段のtympanogramで判る。

 

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 ジアテルミーを用いない通常の治療では耳管通気度はあまり改善されない。鼓膜チューブ挿入術は鼓膜に挿し込んだチューブを通じて鼓室を換気し滲出液の吸収を図ろうという、いわば窮余の策的な消極的治療である。図は柄付きチューブと鍔形ドレインなどを示す。

 

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 チューブを入れた鼓膜所見である。成長による自然治癒を待つため長期保持が必要であるが、円滑に経過しないで穿孔が残遺する例もある。

 

スライド7 滲出性中耳炎の難治例

 

スライド8 ヒスタグロビンを用いた理由

 @学齢期以上の症例では治療に難渋する例は少ないが、35才児に難治例があること A中耳炎罹患後にみられる1〜2才児の難治再燃例にグロブリン注射が有効であった経験 B鼻アレルギーにヒスタグロビン著効例があったこと C成人の再燃する慢性滲出性中耳炎例にヒスタグロビンが奏効した経験などである(第1表)。

 

症例

S.O. 1.5才男:反復再燃性中耳炎にグロブリンを用いた幼児の症例

鼓膜切開は初診後4ヶ月の間に9回、1年後までには13回必要であった。グロブリン注射(3ml2回に分注)をしてから軽快し、2才になってからマイクロ波ついで超短波治療も出来るようになって1年半後に治癒した。その間の通院回数と経過を表示したが、数年に1例くらい、私はこのような例を経験している(第2表)。

 

H.S. 26才女:ヒスタグロビンが奏効した成人の例

大人では難治でてこずる例はごく稀であるが、この例は左滲出性中耳炎、右耳管狭窄症で1年半にわたる治療が必要であった。その間に鼓膜切開7回、穿刺1回、既往にうけた摘出術後の残存扁桃の炎症も高周波凝固で治したが、結局ジアテルミー3クールとヒスタグロビン注射16回で完治した(第3表)。ちなみにジアテルミーは約25回を1クールとしている。

 

M.Y. 5.5才女:両側急性中耳炎後の移行例

初回の中耳炎はジアテルミー1クールで完治したが、半年後再び急性中耳炎に罹患し、3ヵ月後に滲出性中耳炎に移行した。6.4才からジアテルミー2クール以上とヒスタグロビン8回注射後に治癒した。1年半を要したが、聴力および鼓膜所見はまったく正常に戻った完治例である(4)

 

R.U. 2.3才女:両側急性中耳炎後の移行例

1年間にジアテルミー2クール施行して完治、その半年後3.8才で再び両側急性中耳炎になり滲出性中耳炎に移行、鼓膜切開4回、穿刺1回、ヒスタグロビン注射10回の1年後4.8才で寛解したが、なおもヒスタグロビン注射5回を追加し完治を目指して治療を継続中の例である(5)

 

Y.U. 4.5才男:両側耳管中耳カタルから移行した例

ジアテルミー1クールの3ヵ月後に治癒したが、半年後、5才で左滲出性中耳炎となりジアテルミー1クール施行。なおも軽快せず血性滲出液の所見となりヒスタグロビン注射6回後寛解した。その後も中耳カタルの所見に消長があり、なお治療を継続した例である(6)

 

H.H. 3.5才男:両側急性中耳炎後の移行例

ジアテルミー20回施行後4才で滲出性中耳炎に移行した。滲出液はとくに左鼓膜が黒い所見であった。鼓膜切開排液後デカドロン0.5ml注入、週1回でヒスタグロビン注射7回の後、4.6才でtympanogramが右耳は通気後にA型、左耳はC型に改善した。ヒスタグロビン注射を追加し合計12回。治療期間は1年半で、その後月23回の治療を継続した例である(7)

 

症例のまとめ

 就学前の5才児3 4才児1と 26才女性の計5例について調査した。ヒスタグロビン注射は6〜16回、治療期間は1年〜2年であった。治療成績は治癒2、寛解3で 効果++が2 +が3例であった。(表8)

 

結語

ジアテルミーを適用しても難治であった滲出性中耳炎の5例にヒスタグロビン注射を行った。治癒2 寛解3、治療手段として有用であった。