[回答]
交流電源 50 Hz(関西 60 Hz) の低周波の洩れ電流は危険なので、心電計と同程度の100
μA 以下に規定されているが、万全の保護対策として機器にはアースをしっかりとっておく。
身体の電流反応は周波数が高いほど鈍く、数百 Hz 以上では数 A程度まで流しても反応
が起こらない。高周波凝固や切開に用いる電流は数十〜数百 mA であるが、目的の部位以
外に高周波電流が洩れないように対極を患者に持たせる。鉛の対極板は古くなると凸凹に
なり、凸の一部分だけに電流が流れると、対極がメスのように働き熱傷を起こす心配もある。
棒状に丸め濡らしたガーゼの袋に入れて右手に持たせるとよいが、滑らかな金属製の円
筒形手持ち対極はそのまま使えて安全である。診療台の肘掛け金属部に素肌が触れぬよ
う布製カバーを掛け、介助者は手掌全体で患者の頭部を固定する。指先だけで持つと電撃
感を受けることがある。患者の時計、メガネ、ゆるい指輪は外させ術者はゴム手袋をする。
凝固の予備実験として対極版の上に肉片を置き電極針を刺して通電してみる。表面に当
てただけでは 1〜2 秒で白濁凝固するが、深く刺入するにつれて凝固に要する秒数は長く
なる。鼻腔の粘膜凝固について、実際に近い条件の実験を行うには、対極を持たせた被験
者の頬部皮膚に甲介大の肉片を貼付し密着させて、それに通電してみればよい。この際コ
ードの断線や接続部の接触不良に注意し、電極は磨いて清潔にしておく。
以上は一活用電極法(モノポーラー)の場合である。二活用電極法(バイポーラー)で
は手持ち対極を持たせないで済むが、一般的な注意事項は両法とも同じである。
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[質問]鼻・扁桃・鼓膜凝固時の麻酔
[回答]
アレルギー性鼻炎の高周波電気凝固術については、高電研会誌第 6号 27 〜 32 頁(19
84) を参照されたい。麻酔と使用する機器をはじめ具体的な各人各様の手順、術後の経過
などについて、日本医事新報 NO.2922 (1980) の質疑に河嶋光氏が詳細に解説して回答し
ているので、是非御覧いただきたい。私は凝固には部位を問わず 4 %と8 % キシロカインの
表面麻酔を用いる。鼻中隔のごく皮膚に近い部分からの出血、軟口蓋成形時の口蓋弓の
凝固など、特に疼痛が強そうなとき例外的に注射による局所麻酔を行う。
鼓膜凝固は 8 %キシロカインで間に合うが、鼓膜麻酔液でもよい。原はイオントフォレー
ゼ麻酔を行っている。仁保は、扁桃凝固には扁桃実質に対する局麻注射を勧めている。
凝固の部位を問わず、組織から電極を少し離して通電すると、火花放電する。この時に
疼痛を訴えることが多い。電極針を刺入して通電しても、凝固が進むと刺入部の針の周囲
で放電し始める。その頃になると、放電するまえに苦痛を訴える。凝固時の疼痛には熱感
による要素もあるようで、我慢できる程度の苦痛は避け難いのではなかろうか。ともかく
疼痛を生ずる状況を避けるよう、電極の選択と手技について工夫する他ない。耳鼻咽喉科
における高周波電気凝固は、今後も引き続き私どもの検討課題である。