◆02/05/14 「一つの敗北」

 各メディアに拠ると、日本代表コーチであるフィリップ・トルシエは、ワールドカップ本大会登録メンバーの発表を書面のみで行い、本人はその席に立ち会わないそうだ。これを書いている段階では発表日前だが、本当にそのようになったのなら、自分はこれをトルシエの敗北と解釈する。

 もちろん、トルシエが戦う第一の相手は本大会で試合をするベルギー・ロシア・チュニジアの参加国であり、勝ちあがって相対する全てのチームだ。

 だが一方で、日本のメディアの体質をスターシステムと名付け、戦いを挑んだ。上手く立ち回れば見方にできるメディアに挑戦を挑み、日本が誇る(?)スターシステムを壊そうとしてきた。その戦いの最終決戦の場はこの代表発表の場であるわけで、この場を回避した事は敵前逃亡、敗北と呼ぶべき選択だ。

 この行動を、余計な騒動から逃げるためと容認するのはたやすい。低俗メディアの騒ぎを避けるためとエクスキューズするのも簡単だ。だが、ともすればそのメディアを、スターシステムを、利用するかのようにして選手にプレッシャーを与えつづけてきたのはトルシエ自身であり、現時点でトルシエの“ファミリー”に入っている選手はそのプレッシャーを、トルシエが与えつづけたプレッシャーを、自らの力で解決してきた者たちだ。彼らはプレッシャーに打ち勝ってきたのだ。そんな彼らを指揮する指揮官が、彼らが打ち勝ってきたプレッシャーから、逃げることは許されない。

 トルシエは発表するべきだ。

 自分の言葉で、自分の声で選手の名を呼び、「最強の23人をそろえた」と、世間に喧伝するべきだ。

 そうでなければ、世論は人選に対して不満を言いつづけ、きっと一つに纏まらないだろう。この戦いに負けることは、先に待ち受ける真の戦いにも負けることになりかねないのだ。