◆「正義が勝った日」

時間:2003.11.29(14:00 Kick off)
場所:横浜 横浜国際総合競技場
結果:横浜 2−1 磐田

 面白いことが起こるものだ。これだから football life は止められない。この季節には珍しい小雨が降り頻る中、横浜国際に集まった我々は一様に、football の持つ面白さ、そして怖さを感じることができた。2003 年のJリーグ最終戦は、football が持つ魅力を十分に披露して終了した。

 最終節を前に、首位・磐田と勝ち点3差ながら得失点差で優位に立っていた横浜。勝っても優勝は鹿島−浦和の結果次第だが、勝てば優勝の確率は十分にあった。観戦仲間の多くは、鹿島戦の敗戦の後でもこう言っていた。

 「残り勝ち点6とれば得失点差で優勝だよ。」

 その予想は、根拠は無いかもしれなかったが、今期のリーグ戦を見てきていれば説得力もある予想だった。そして、最終節を前に予想はほぼその通りになった。現実的には浦和−鹿島の結果も関係するが、きっと、この試合に勝ったほうが優勝する。そんな気持ちで決戦の地、横浜国際へと向かった(徒歩5分)。

 今回は大一番ということで、試合前にちょっとした仕掛けも手伝う。G裏の、トリコロールの風船を2階から降らせる企画で、風船を膨らませるのをお手伝い。G裏から移動しては流石にこういう事も減ったけど、たまにやるとお祭り準備みたいで燃えますな。試合前の選手入場時には子供を使って一斉に階下に降らせる。トリコロールの風船が大旗の上に転がってとても綺麗でした。

 前半は、正直いってCSも覚悟した。
 中澤が抜かれてできたピンチから、目測ミスも重なって開始早々に失点。まぁ、ここまでは流石磐田、流石優勝決定戦、簡単に勝たせてはくれないなぁ、という感じだった。が、開始15分に我々は、この大一番にはあるまじき蛮行を目にすることになる。パントキックをグラウに邪魔されたエノテツが、突然キレてグラウに突進。そのままチャージを食らわせてしまう。場内騒然、凶悪席も一様に切れた。

 「てめぇ、何考えてやがる!」
 「試合ぶち壊しじゃねーか!」
 「うちの下部組織は何教育してんだ!」
 「プロ云々じゃない、社会人として問題だ!」
 「もう来年契約するな!」
 「来週の新幹線代も持ってくれるんだろうな!」

 これでまた10人で試合となってしまい、圧倒的に不利に。が、前節を除いて10人で試合をした経験が活きることになるとは、もっと後に知ることになるのだが・・・。GKには佐藤を下げて下川を投入。この後下川は終始安定したプレーを見せ、我々を安心させることになる。

 前半は、サポーターよりも選手がテンパっていたようだ。それを象徴するのが、前半にあった磐田ゴール前での間接FK。審判は手を上げて間接FKであることを知らせているが、セットについた横浜のそれはどう見ても直接FK。そして、やっぱり直接蹴り込んでしまい、相手に当たってピッチの外へ。それじゃ入ったとしても認められない。こうして、どうしてもチャンピオンシップをやりたいリーグ側の意志に従うかのように、前半は終了した。

 ハーフタイム。抽選会のイベントがひとしきり終了し、他会場の結果が流れる。鹿島2点リード。だが、そんなものは関係ない。まずはこの試合に勝たねばならんのだから。と、この試合に無料招待券で観にきていた同じ会社の鹿島ファンA氏から電話が入る。

 A氏「ちゃんとしっかりやってよ〜」
 わし「馬鹿なGKですんませんねぇ」
 A氏「頼むよ、ほんと。」

自分も、おそらくは彼も、試合終了後に起こる出来事はこの時点で想像していなかった。

 後半開始早々、再び試合は動く。CKからこぼれた球をマルキが頭で押し込んでまずは同点! しかし、日頃からボールポゼッションに優れる磐田に対して10人では、なかなか攻めのチャンスも生まれない。が、守備では最後の最後で踏ん張って、相手にも決定機を与えない。まぁ、磐田のパス回しが横や狭い局面でのパス回しで、得意の中距離1タッチパス回しが無かったのが救いだったのだけど(フリーランニングも少なかったなぁ、そういや)。遠藤に代えて上野、そして河合に代えて大橋と、あくまでも攻める姿勢を貫いた交替を見せる横浜ベンチ、一方の磐田も川口、西野といやらしい選手を次々と送り込んでくる。決勝点をめぐって必死の攻防が繰り広げられるが、最終戦という特殊な状況が勝負の綾となった。

 引き分けでもいい。

 残り5分、磐田の選手達は引き分け狙いに切り替えた。それはそれで自然の選択だっただった。しかし、やり方がまずかった。お友達の影響を受けすぎたのか、痛がっては倒れ、プレイが切れては倒れ、見苦しい時間稼ぎに出たのだ。特に、ロスタイム突入前にピッチに突っ伏した山西(だったか?)は、なかなかストレッチャーに乗ろうとせず、乗って出たら何事もなく戻ろうとする。それは2節前にここで観た鹿島の池内のそれと同じ行動だった。

 そんな行為をしていては、勝利の女神もそっぽを向くに決まってる。

 ロスタイム直前だったろうか。下川から出たロングパントを松田が拾ってさらに繋げて放り込む。門の形になった磐田DFの間に久保、磐田GKも飛び出す、久保の頭にヒットしたボールは、GKの頭上を越えてサイドネットに収まった。あとはスタンドは狂気乱舞。暴れる! とにかく暴れる! そして、うなだれる磐田の選手と磐田G裏に向かって叫ぶ。

 「磐田ば〜か!」
 「汚いことやって勝とうとするから、こうなるんだよ!」
 「正義は勝つんだ!」
 「こっちは汚いことはやってないぞ、馬鹿だから退場しただけだからな!」

 そして、試合は終了し、磐田の優勝は阻止に成功。例えチャンピオンシップになっても、これなら鹿島にリベンジすることも可能だろう。

 ところが、勝利の女神は先日の悪事も見逃してはくれなかった。

 終了から程なく、オーロラビジョンに浦和−鹿島戦の映像が流れる。そこに映し出されるのは、今にも泣きそうな顔の鹿島の面々。小笠原など、いまにも泣き出しそうな顔だ。画面上に映し出されたスコアを見ると、なんと2−2! どうも、あちらもロスタイム直前に同点に追いつかれたらしい(しかも、後で聞いたら、うちの決勝ゴールの直後だそうな)。そして、こちらも程なく試合終了。こうして、史上2チーム目となる横浜の完全優勝が達成された。

 「鹿島もば〜か!」
 「日頃から汚いことばっかやってるから、こういう目に遭うんだよ!」
 「これで田舎に試合を見に行かなくて済むし、天皇杯も週末に見れる。」
 「チケット払い戻さなきゃ。」
 「私、信じてチケット買ってなかったもんね。」

 これがフットボール。とはいえ、こんな出来過ぎの展開は、どんな脚本家も思いつかないだろう。だって、御都合良過ぎだもの。でも、これが本当に起こってしまうのがフットボールの怖さであり、楽しさでもある。だから、僕等はまたきっとこれから先も、どんなに楽しい試合を観ても、どんな重苦しい試合を観ても、競技場に足を運びつづけるだろう。

 「♪Jリーグチャンピオン Jリーグチャンピオン Ole! Ole! Ole〜」

 スタジアムには、いつまでも歓喜と驚喜の笑い声がこだましていた。